未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>117.アバップ

2007/03/12 20:44

週刊BCN 2007年03月12日vol.1178掲載

PHPライブラリ開発

 PHP(オブジェクト指向スクリプト言語)開発のアバップ(松本創社長)はライブラリ開発などに注力している。PHPライブラリ「Seaf(シーフ)」は、取引先のシステム開発会社などと共同で開発した。プログラマのなかには、他人が作ったソフトに「使いづらい」といった拒絶反応を示す人もいる。そうした反応を克服するため「シンプルで、イージーで、アクセプタブル(受け入れやすい)」をコンセプトに掲げた。小規模から中規模のウェブアプリケーションに特化し、「Xoops」などの既存のフレームワークと親和性が高い。

 ライブラリを最初に開発したのは19歳の時だ。取引先の開発会社から「日本語のメールを送るプログラムが書けない」などプログラムに関する悩みがあがっていた。松本社長はもともと小さいプログラムを書くことが得意であったため「送信部分だけのプログラム」を書くなどして、問題を解決していった。

 小さいプログラムをまとめているうち、ある企業から「Xoops」のソースコード解析の仕事が入った。そこからオープンソースの中身を見るなどしてソースコードを勉強。ライブラリのブラッシュアップを重ねた。今後は「Seaf自体を製品化するより、Seafの提供などを含めた、開発支援サービスを提供したい」考えだ。

 松本社長は16歳からプログラムを学び、18歳の時、フリーで受託で開発を始めた。11歳で不登校になったが、人と関わることは好きで日本中を回り、友人を増やした。

 インターネットが普及し始めたころ、不登校児たちのコミュニティサイトをゼロから立ち上げた。プログラムを習得していき、フリーで活動を続けていたが、友人の誘いで、昨年会社を設立した。「従業員の皆が好きな仕事をすればいいと考えている」ことから、同社はシステムに限らず、デザインなどさまざまな事業を行う。松本社長自身も「役者、作家、プログラマ」など多くの顔を持つ。こうした表現活動を多くの人の目に触れるところに持っていくビジネスを確立したいと意気込む。

 また、開発もゼロから作り上げる「表現の一つ」と定義する。「開発はきついが、課題解決のために方法を発想すること、きれいなソースコードを書けることが楽しい」という。仕事に誇りを持ち、開発力があると自負できる会社にしていくのが目標だ。いずれは不登校児の雇用や、不登校児向けのIT学校を作ろうと画策する。「興味を持ってくれる経営者がいれば、ぜひメールしてほしい」と、熱っぽく訴える。(鍋島蓉子)
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