情報サービス産業界で不正取引事件が相次ぎ発覚している。IXIなど中堅SIerにとどまらず、今度はNECの「水増し発注」や富士通がからむ「架空循環取引」など、取引先を膨大に抱える大手SIベンダーの不正が明るみになった。自社製品の「担ぎ手」を複数社利用した悪質極まりない手口だ。

 NECの場合は、下請け先へソフトウェアなどを水増して発注、社員の1人がリベートを蓄財したというもの。富士通の事件は、関係会社の富士通関西システムズが「架空循環」をし、下請けのNAJが破産申し立てしたことで表面化した。NECの場合は、「大手」の立場を利用した。下請け側も「いずれ仕事が回ってくる」と考え、長年の慣行や「しがらみ」にからめとられていた可能性は高い。

 かつて業界では、架空取引や実態のないスルー取引が横行した(と、ここでは過去形で表記する)。例えば、ハードウェアを開発・販売する大手SIベンダーが取引先に大量の製品を売ったように見せ掛け、帳簿上は自社在庫が減っているようにする手法。あるいは受託ソフトの「人月単価」を不正に操作するなどが典型的な例だ。

 このような動きに対し、規制のタガがはめられ、2006年4月に企業会計基準委員会からソフト取引に関する「実施基準」が出たほか、会計の不正操作を取り締まる監査が厳格化した。ここにきて、不正取引が次々発覚したのは、こうした規制強化策が機能し始めたことも要因のひとつであろう。

 今回の不正は、特異な例と思いたい。だが、取材を進めるほどに、実態はそうではなく、この手の不正が業界内にいまだ横行していると勘繰ってしまう状況だ。CSAJ/JCSSAの「取引慣行・契約に関する検討委員会」では、中堅SIerのトラブル案件が報告された。「グループ企業内の多段階取引」など、契約上の問題が「不採算案件」になった例が示された。だが、視点子の目には「『しがらみ』が中堅SIerを苦しめた」ように思えた。

 仕事を受ける先が、案件が潜在的にあるグループ会社のITを一手に扱う大手SIベンダーなどだった場合、「赤字覚悟」でシステム構築を進めてしまうこともあるという。このままでは、公正なIT流通が実現できない。この件でNECに取材申し込んだが、保留。富士通は「必ず公表する」(黒川博昭社長)と明言したので、その時期を待つ。本紙ではIT流通に潜む闇を再度問い直したいと考える。