畑の中も無線LANで情報共有

 幸田(こうた)商店は1943年、鬼澤清・現会長が、農業用肥料の販売会社として創業した。屋号は、鬼澤会長の祖母でお産婆さんとして地域で名を馳せた「幸田あき」から命名。肥料販売で地元農家の信頼を得て、10年後に「干し芋」の集荷、販売を開始した。

 「干し芋」は1-3月の季節商品。大手スーパーでは、シーズン以外には棚に置いてくれない。茨城には他の「干し芋」加工会社もあるが、農家から買い上げた地元産のサツマイモ「玉豊」を使った干し芋を2次加工して販売するのが一般的。低品質でも組合で一律に値段を決められてしまう。そこで同社は「きな粉や大豆などを使って健康増進と食の豊かさを知る商品を開発した」(鬼澤宏幸社長)。これで、新たな販路としてドラッグストアの棚を確保できた。

 同社の売り上げ成長率は、年率10-15%。伸び続けるには、「伝統作物に付加価値をつけることで、チャネルが拡大する。何より、作物の状況や顧客のニーズなどを的確に捉えるチームワークが重要」(鬼澤社長)とみている。

 同社のITシステムを担当するITコーディネータ(ITC)の葛貫壮四郎氏は、2004年から業務フローや社員の行動パターン、既存と新規システムの連携性のあり方などを徹底調査。この5年間で4工場を拡張してきたが、畑作地域にあり公衆回線が通じておらず、社内LANや電話回線の整備が進まなかった。受注担当は、注文を受けるたびに各工場へ走り、生産予定を各工場の黒板に書き込む毎日だった。

 通信システムの設置を担当した綿引無線の綿引敏社長は「公道を挟むため、物理的な電話線やLANケーブルは敷設できず、無線LANという選択肢しかなかった」と振り返る。結局、通信速度と拡張性を考慮し、アイコムの屋外ビル間無線、IP電話ルータ、IPワイヤレス端末(現在はデュアル端末を検討)やIP─PBX(構内交換機)などを設置した無線LAN方式を採用。いまでは、無線LANを使ったFAXやIP電話などで、営業担当者から農作物の状況や卸す先の大手スーパーなどの受注情報などを伝達している。自身もITCである綿引社長は「業務改善の方向性が明確化され、そのなかで通信システムにどのような役割を求めているかという点が整理され、システムの検討が効率的にできた」と、葛貫氏の事前調査が役立ったという。

 05年に導入した自動物流倉庫と連携する販売管理ソフトウェアとしては、従来から利用していたオービックビジネスコンサルタント(OBC)が開発し、常陽銀行系列の常陽コンピュータサービスが販売する「商奉行」の「LanPack」を「ERP」版に代えた。移行性や操作性、連携実績などから葛貫氏らで判断しての入れ替えである。

 これまでに基幹システムの基盤整備や通信システムを含め約5000万円を投じた。鬼澤社長は「短期的な結果を求めず、数年をかけて辛抱強くやる必要がある。ITCの存在は不可欠」と、同社顧問に就任した葛貫氏との二人三脚は続く。(谷畑良胤●取材/文)