ビジネスマッチングがカギを握る  東北地域の情報サービス産業に新しい動きが出てきた。ものづくりの原点を改めて見つめ、産官連携による“東北発”の製品で全国区を目指す。すでに複数の事例が生まれている。関東や関西などとと比べマーケットが小さいというハンデを商圏を広げることで跳ね返し、産業の活性化を図っていく。(佐相彰彦●取材/文)

“東北発”で全国区を目指す


■海外企業とアライアンス 県や関連団体を巻き込む

 宮城県仙台市にオフィスを構えるトライポッドワークスは、海外IT企業と国内IT企業とのビジネスマッチング事業に着手した。ドイツのベンチャーのIT製品と国内ベンダーの製品強化ニーズを組み合わせ、ビジネスマッチングを行うほか、日本市場に適したローカライズやアプライアンス製品開発のコンサルティング、国内IT企業による海外進出の支援、トライポッドが持つ技術サービスなどを提供。県内IT企業や海外企業の情報収集、県内IT企業のビジネス拡大を支援するというものだ。

 事業化が可能となったのは、宮城県が実施する「海外IT企業マッチング事業」を受託したことによる。ITベンチャーを日本市場に進出させるためのコンサルティングを手がけるドイツのジャパンマネージメントコンサルティングと、今年7月にコンサルティングメニューの共同開発をはじめとしたパートナーシップ契約を交わした。

 トライポッドでは、これまでも韓国IT企業3社と業務提携、そのうち韓国JIRANのソフトと国内企業のサーバーを組み合わせ、ファイル転送のアプライアンスサーバーとして製品化、「GIGAPOD OFFICEHARD(ギガポッドオフィスハード)」の名称で販売に踏み切った経緯がある。

 佐々木賢一社長は、「仙台市には、優れた技術を持っているものの製品開発力や販売力が足りないために、技術力に見合った業績拡大を実現できていないIT企業が多い。一方、ドイツはベンチャー企業の技術力を海外に広めたいという考えを持っている。そこで、双方のメリットになる仕組みを構築することが重要と考えた」と語る。

 その第一弾としてトライポッドがコンサルティングを手がけるのは、ネットワークセキュリティ関連製品の開発などを展開するサイバー・ソリューションズ。「海外に進出させるためのビジネスマッチングを行う」としている。トライポッドでは、今回のビジネスマッチング事業で初年度に5社のコンサルティングを計画している。同社が会員でもある東北ITベンダーによる団体の「宮城県情報サービス産業協会(MISA)」や「東北ITクラスタ・イニシアティブ(TIC)」などと連携を図っていく方針だ。

■販路支援に行政が動く都市圏のNPOと連携

 マッチング事業がビジネスにつながるとトライポッドが判断したのは、同社自身もかつてビジネスマッチングを行って成功したという経緯があるからだ。韓国企業との提携で製品化した「ギガポッドオフィスハード」は、今年2月の出荷開始以来、8月初旬の時点で80台余りの販売台数に達した。この勢いに乗り、「発売後1年間で500台はいける」と自信をみせる。

 販路として東京など首都圏の販売代理店とパートナーシップを結んでいるが、「今後は、大阪をはじめ関西で販路が開拓できそうだ」と展望する。近畿経済産業局が手がける「販路ナビ」を通じて近畿圏の販売代理店を開拓できる体制が整ったからだ。

 「販路ナビ」というのは、「販路マッチング・ナビゲーター」と呼ばれるITベンダーのOBが販路をコンサルティングしてくれるというもの。東北経済産業局と近畿経済産業局との連携で、東北圏内のIT企業が関西での販路を構築できるようになった。トライポッドは、佐々木社長が日本オラクル出身ということもあり、東京で販売代理店を確保することができた。「前職で東京のベンダーと取引していたからだろう」とみている。しかし、近畿圏には人脈がなかった。これを、「販路ナビ」で解決したというわけだ。

 「行政やベンダーがビジネスマッチングサービスを提供しているのであれば、それを積極的に活用するのも製品を拡販するための有効な手段となる」と強調する。

 近畿経済産業局との連携に伴い、東北経済産業局では「当局でも、積極的にビジネスマッチングでベンチャー企業を支援していかなければならない」(三浦敏・地域経済部産業支援課課長補佐)との考えから、「BUY・ベンチャー東北」という支援事業で関東圏企業のOBで結成された「NPOヴイエムシイ」とのパートナーシップにより都市圏での販路構築支援を積極的に行う。

■中小企業のIT化が課題 IT経営応援隊が後押し

 東北圏では、ITベンダーが活性化するために中小企業のIT化を促進することも課題の1つとしてあげられている。そのため、東北経済産業局では経済産業省の推進プロジェクトである「東北IT経営応援隊」を、今年度から地元メンバーのコンソーシアムによって運営させることにした。嶋田辰也・地域経済部情報・製造産業課統括係長は、「今年度は、“新生”『東北IT経営応援隊』が本格スタートした年。当局としても、全面的にバックアップしていきたい」との考えを示す。

 東北IT経営応援隊の体制は、地域情報化ビジネスを手がける「仙台ソフトウェアセンター」を筆頭に、コンサルティング会社の「IT経営コンサルティング」、東北IT企業の団体「TIC」で構成される。中小企業経営者への研修やコンサルティングなどが主要事業。

 東北IT経営応援隊でプロジェクトマネジメントを担う佐藤賢一・IT経営コンサルティング社長は、「東北の中小企業は単にパソコンを導入しているケースが多く、IT化で経営革新につなげているのはまれ。相談できる相手がいなかったからだ。そこで、セミナーを通じてIT利活用を学んでもらうほか、ITベンダーとのコミュニケーションが図れる“場”を提供していきたい」としている。

 活動開始は今年7月から。「まだまだ始まったばかりでやるべきことは多い。まずは、ウェブサイトを立ち上げた」という。サイトでは、具体的なアクションを起こしたい中小企業の経営者やITベンダーを対象としたコミュニティページ「経営者SNS」の提供を開始した。当面は、サポーターやIT経営に関連する専門家などの参画に力を注ぐ。