日本全国で課題になっている情報サービス産業の活性化。四国では、“コミュニケーション”を主軸として、さまざまな取り組みが進められている。四国経済産業局や地方自治体では、ベンダーとの密な情報交換やアライアンスなどで積極的に支援策を打ち出そうとしている。消費者も含めた情報化の推進を強化することで底上げにつなげる姿を垣間見ることができる。(佐相彰彦●取材/文)

“コミュニケーション”で活性化を
積極的な情報化推進で底上げ

■密な情報交換がカギ“現場力”がポイント

 地方のICTビジネスは、首都圏と比べて絶対的に需要が少ないことから、業績不振に陥るベンダーが多いといわれている。なかでも、中小ベンダーが依然として厳しい状況との見方が強い。こうした状況を打破するため、地方自治体をはじめ“役所サイド”には「中小企業のICT化」と銘打って情報通信サービス産業の活性化につなげるという狙いがある。しかし、なかなかプラスのサイクルとして働いていないのが実情だ。四国でも同様の傾向がみられ、経済産業局による中小企業のICT化を進めている。特徴的なのは、ベンダーとの密な情報交換で何とか底上げを図ろうとしていることだ。

 四国経済産業局に熊野哲也・地域経済部情報政策室長補佐という人物がいる。地元企業との交流を積極的に行っていることなどから、ICT業界のベンダーで知らない人はほとんどいない。

 その熊野室長補佐は、「地域経済の発展に向け、地元企業とのコミュニケーションが最も重要になってくる」と強調している。中小企業が何に悩んでいるのか、ICT化を行ううえでの課題は何か、一方でICTベンダーがビジネスを手がけるうえでの障壁は何かなどを聞いて回る。もちろん、役所の職員という立場から、特定の企業に肩入れすることはない。あくまでも、地域活性化に向けた取り組みの1つとして現場の把握に努めているわけだ。そのため、ICT業界からは「四国のICT業界を底上げさせようという意識がひしひしと伝わってくる」と評価が高い。

 四国経済産業局では、中小企業を支援する「IT経営応援隊事業」を手がけている。支援事業は他の地域でも実施されているが、ここで特徴的なのは、四国4県の6主要地区にIT経営応援隊が設置されていることに加え、それぞれのIT経営応援隊を束ねる「四国IT経営応援隊」が存在することだ。

 四国IT経営応援隊の事務局を担当する四国生産性本部の河内正則コンサルティング部長は、「各IT経営応援隊の自主的な活動を重視しているため、四国IT経営応援隊は窓口のような役割。ただ、困っていることや課題を吸い上げ、四国全体で何を行っていけばいいのかということを常に考えている」としている。こうした取り組みをみると、四国は“現場力”がポイントとなっているようだ。

■県民への情報化推進は積極的 ベンダー参入は活性化に寄与

 四国の支社や支店などが集まる香川県高松市。駅前には、香川県や高松市が中心となって取り組んだ再開発事業「サンポート高松」の中核施設「高松シンボルタワー」がそびえ立つ。国際化・情報化に対応した文化・コンベンション機能、情報発信交流機能、民間の業務・商業機能などさまざまな機能を備える同施設は、産官連携強化による情報化推進を促すことを同施設で実現している。

 その柱になっているのが情報交流館「e-とぴあ・かがわ」である。この交流館は、香川県のPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業として民間企業が運営している。運営企業は、かがわ県民情報サービス。凸版印刷やトータルメディア開発研究所、NTTドコモ四国、大成建設、デジタルハリウッド、アムロンの6社が共同出資した。

 公共施設などの建設や運営などを民間企業が引き受けるPFIなだけあり、パソコン講座をはじめ、子供向けITイベント、学生を対象に映像装置や音響設備などを提供など県民のITリテラシーを高めるための取り組みが本格的だ。かがわ県民情報サービスの横田喜勉・事務局長は、「講座やイベントでは、県民のニーズに応えた体験型を充実させている」と胸を張る。2か月に1回は講座メニューの見直しを行っているほか、第一線で活躍するゲストの招請で最新テーマを取り上げた講演を実施するなど「高度情報化を推進する拠点になる」ことを目指している。ほかにも、ホームページやオリジナルマップが作成できる機能を搭載したユーザー参加型の会員制インターネットサービスも提供しており「すべての県民を主役にできるようなコミュニティ作りに力を注いでいる」としている。香川県の大垣和正・政策部情報政策課長補佐は、「e-とぴあ・かがわは、情報化の普及啓発や人材の育成、集いと交流の創出につながっているのではないか」とみている。

 また、香川県ではITベンチャーや中小企業への支援強化を図るためにマイクロソフトと連携。マイクロソフトでは、同県で「マイクロソフトITベンチャー支援プログラム」を実施している。香川県の泉川雅俊・商工労働部産業政策課長は、「地域経済の活性化を促す点では大きい」と期待。マイクロソフトは、「四国のビジネス拡大につながる連携」(楠瀬博文・西日本ビジネス本部四国支店長)としている。

 香川県にとっては、マイクロソフトによる四国拠点の開設などITベンダーによる新規参入は、「産業の底上げという意味で歓迎している」(泉川課長)という。マイクロソフトは、「四国に根付いた営業が実現できている。地場ベンダーとのパートナーシップが深まっている」(楠瀬四国支店長)と、拠点開設の効果を説明する。産官の連携は双方のメリットになり、地域経済の活性化を促すことにもつながるということだ。