奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る

<奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る>動画投稿サイト編(第2回)

2008/06/09 16:04

週刊BCN 2008年06月09日vol.1238掲載

著作権問題の解消に全力

 ユーザー登録数700万人を超えるニコニコ動画が現れるなど、国内の動画投稿は大いに盛り上がる。だが、不安要因もある。著作権問題はその1つだ。

 人気動画の多くがMADと呼ばれる二次創作作品。アニメやゲームのシーンを編集し、プロモーションビデオ(PV)やアニメ番組のオープニング、エンディング風にまとめるなど形態はさまざま。なかには、原作・原画のキャラクター設定を生かし、音楽に合わせて独自のストーリーを展開する作者もいる。

 原則論をいえば、権利者の承諾がない二次創作は認められない。ニコニコ動画を運営するドワンゴグループでは、著作権に触れる動画は積極的に削除する。

 では、どうすれば権利者の理解を得られるのか。権利者のコンテンツビジネスにとってマイナスであるならば、承諾は得られない。だからこそ、できるだけ多くの視聴者を集め、属性もはっきりさせる。ニコニコ動画であれば、アニメやゲーム好きな比較的若い層だ。

 少子高齢化が進むなか、アニメやゲーム業界は、アニメ文化で育った青年層や団塊ジュニア世代まで射程範囲に入れる。子供だけでは国内市場のサイズを維持できないからだ。子供が寝ている夜中の時間帯に放送する深夜アニメが増えているのも、こうした背景がある。 ただ、テレビ局が無料でアニメを放送してくれるわけはなく、費用がかかる。深夜アニメの場合、受信できる地域も大都市圏に限られる。それでも放送し続けるのは、アニメ化によって知名度が高まり、原作の小説やコミック、CD、DVDなどの販売増につなげるため。権利者にとっては一種の販促活動に近い側面をもつ。

 もっと視聴者数を増やせば、権利者との関係も変えられるのではないか--。ドワンゴグループでは権利者との関係づくりに必死だ。ニコニコ動画にはアニメ、ゲーム好きな視聴者が1日平均170万人以上訪れる。2009年にはドワンゴグループの携帯電話コンテンツなどの利用者と合わせた登録ユーザー数を今の約1000万人から2000万人へ拡大させる目標をかかげる。

 単に視聴者を増やすだけではなく、どのようなタイプのコンテンツなら、どれだけの売り上げにつながるのか、「統計データに基づいた具体的な数字を権利者に提示する必要がある」(ドワンゴグループでニコニコ動画を運営するニワンゴの杉本誠司社長)と、データの収集、分析に全力をあげる。

 権利者のビジネスにプラスになることを証明できれば、関係づくりに大いに役立つ。著作権に絡む問題解消に向けた道筋が見えてくる可能性もある。(安藤章司●取材/文)

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