IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>54.ITコーディネータ協会

2008/07/14 16:40

週刊BCN 2008年07月14日vol.1243掲載

ITCの活躍チャネルを拡大へ

 設立8年目を迎えたITコーディネータ協会(関隆明会長)は2008年度、独立系ITコーディネータ(ITC)のビジネス市場確立や国の施策と連動した地域活性化に向けた事業などを拡充する。ITCの有用性を社会に認知させるために、中小企業などの「IT経営」を支援する“本業”にとどまらず、ITCプロセスやノウハウを大学や自治体、商工団体などの活動に役立てることを積極化する方針だ。

 独立系ITCは、企業内ITCやベンダー内ITCに比べて活躍度が高いものの、ITC資格保有者全体の2割程度にすぎない。企業内やベンダー内に比べ、自身でビジネス機会を探す必要があったり、認知度が低く知られていないことが要因で、活動数が限られ「資格取得しても生かす場がない」という声を聞く。

 同協会ではこれまで、独立系ITCのビジネス市場を確立するため、中小企業金融公庫や地方銀行など金融機関や商工団体との連携策を講じてきた。今年度は、こうした組織との関係をさらに強固にするほか、国の地域活性化事業などと連携し、大学や自治体、商工団体などへも直接出向き、講座を開くなどの活動を積極的に取り入れる。

 ITCの資格認定者は累計で8113人(08年3月現在)で、資格辞退者・失効者などを除く有資格者が6354人にのぼる。しかし、ここ数年、資格取得者の伸びが鈍化。同協会の下田邦典・専務理事は「資格取得者が増え、対象母数が減っているのが原因。しかし、持続的な増加に向けた新たな施策が必要」と、独立系ITCの増加策に加え、有資格者全体の約75%を占める企業内ITCと、企業内ITCの約80%を占めるベンダー内ITCの活動を活性化、その役割を社会に認知させる施策を打ち出す。

 企業内ITCとベンダー内ITCの活性化に向け同協会は、両ITCを多数輩出する企業(例えば、日本ユニシスや富士ゼロックスなど)と「緊密な連携を取る」(下田専務理事)という。具体的には、各企業・ベンダーごとに担当窓口の設置を呼び掛け、窓口を通じて情報や意見交換の場を常設する。また、プロダクト販売を主にするSIerやNTTデータなど大手SIer、中小SIer、大手ユーザー企業に分類し、それぞれに属するITC別の活動プログラムを作り、支援策を打つ。

 下田専務理事は「ITCの資格制度がベンダー内のITスキル標準(ITSS)などの資格に埋没して、きちんと位置づけられていない。高度IT人材のスキル体系の中で、ITC資格を明確にするため、ITSSなどとの関連を整理する」と、ベンダー内のキャリアパスなどとの関連も深め、ITCの認知度アップを目指す。

 このほか、新ツールの策定に関連して「SaaS(Software as a Service)/EDI(電子データ交換)システム」を提案するための調査・研究を行う。国が中小企業のEDI普及を2010年までに50%にする数値目標に呼応したもので、「EDIが繋がれば、基幹システムなど他システムも構築する必要がある」(下田専務理事)と、EDI普及を契機に中小企業のIT化を加速させることも狙う。

 (このコーナーは、7月21日号と同28日号は休載します。次回は8月4日号の掲載で、以後は経済産業省の「IT経営力大賞」を受賞した企業のうちITコーディネータが関わった事例をシリーズでお届けします)(谷畑良胤●取材/文)
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