仕入・在庫管理を徹底、ロスを削減

 この連載は今号から、経済産業省が表彰した「中小企業IT経営力大賞」受賞社のうち、ITコーディネータが関わった事例を紹介していきます。

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 北海道札幌市の郊外に位置する「札幌中央卸売市場」には、観光客や地元の人たちが旬の食材を求めて足を運ぶ。同市場の「場外市場」には水産物と農産物の卸小売店が約70店舗があり、鮮魚や青果など道内の新鮮食材を販売している。このなかで、いち早くITを導入した共栄水産(山室吉博社長)は注目企業の1社だ。

 最近の生鮮食品市場は、競争激化の一途で、低価格圧力も増す一方だ。共栄水産はこの環境下で店舗販売以外の販路拡大策として通信販売事業を開始。近年ではネットによる販売も展開し、「楽天」や自社サイトによる通信販売事業へと拡大させてきた。

 ところが、2年ほど前まで堅調に伸ばしてきたネット通販は、生鮮食品販売を売りにする競合が台頭し、さらに「食品偽装」問題を背景に陰りが見えてきた。また「価格競争と原価高騰の煽りで、利益率が年々低下傾向になってきた」(山室昌子・取締役専務)。そんな状況下、「新たな業務改革・改善が必要」(同)と判断。山室専務は、会社の戦略を構築するために経済産業省の中小企業支援策である「IT経営応援隊」の専門家派遣事業を通じてITコーディネータの田坂和大氏を紹介される。

 同社は25年ほど前にオフコンを導入。ネット通販用には、内田洋行のERP(統合基幹業務システム)「スーパーカクテル」をカスタマイズした通信販売業向け「Linkage」を導入、顧客統合管理を行っていた。

 通販は、店舗販売に比べ経費がかかり利益がとりにくい。このため、「売れ筋や動向など売り上げ情報の把握と、これに伴う仕入れや加工、経費の原価把握を随時行わなければ、利益率を上げられないという経営課題を感じていた」(山室専務)ことから、こうした経営課題を田坂氏が紐解いていくことになった。

 「店舗営業と通販部門のコミュニケーション不足解消や、食材の目利きのプロであるベテラン社員の存在(強み)を生かすことなどが議論された」(田坂氏)というように、ITに直接関係のない経営の根本的な課題も話し合われたという。

 こうした議論を経て1年前、山室専務が「まずは仕入・在庫および原価を迅速に把握できる仕組みからスタートする」との断を下し、オービックビジネスコンサルタント(OBC)の「蔵奉行LANPACK」を導入。本社と店舗を無線LANで結び、仕入・在庫管理を開始することになった。(谷畑良胤●取材/文)