在庫を大幅圧縮、次の事業を模索

 水産物などの卸小売業である北海道札幌市の共栄水産(山室吉博社長)は「札幌中央卸売市場」のなかでも“老舗”だ。3店舗での小売りとともに自社サイトや「楽天市場」、紙媒体によって通信販売している。

 販路拡大策として他社に先駆け開始した通販は、数年前まで堅調に伸びていた。だがここへきて競合の台頭や低価格攻勢などで、収益が減少。そこで、すでに稼働しているERP(統合基幹業務システム)に加え、同製品の販売代理店であるエス・アイ・ユゥ(SiU、札幌市)に依頼し、仕入・在庫システムを導入。仕入原価や在庫管理とロスなどを割り出し「過剰在庫」の把握に乗り出した。

 同時期に店舗POSシステムも導入。売り上げの詳細把握と出荷情報の連携を実現した。このシステム導入に携わるITコーディネータの田坂和大氏(B・Pサポート代表取締役)は「経営改革の全体スケジュールは約2年間の工程計画。現時点では1年半が経過し、ほぼ予定通り順調にきている」と話す。共栄水産でシステム導入の指揮を執る山室昌子・取締役専務は「仕入在庫システムと店舗POSの運用が板についてきた。POSなどのデータを分析し、在庫などの把握が週単位でできた」と評価している。今後は通販と店舗の両面で「分析データを前年実績から販売予測に役立てる」として、より適正な仕入れを行い適度な在庫を持つ体制を築くことに力をいれ始めている。

 この間、情報システム改革により、数値効果が現れている。月末在庫額が約500万円から400万円に圧縮され、商品の廃棄・加工ロスは月間約30万円から20万円に減少した。システム導入したエス・アイ・ユゥ(SiU)の遠藤慶司・取締役部長は「システム交渉では経営者としか話をしないのが普通。だけど、課題は現場が抱えている。これをITCの田坂氏が現場目線で教えてくれた」とコメントし、ITCと連絡を取り合って困難な課題を解決できたと評価する。

 共栄水産が展開する通販は、「ITは苦手でも、商品目利きのプロであるベテラン社員」の活躍で、他にない品揃えが実現できた。例えば「月ごとに旬の食材を揃えたり、お年寄り向けにカニの殻をカットし、すぐに食べることができるようにしたり」(山室専務)で差別化を図った。これも、IT導入前の議論で部門を越えたコミュニケーションが活発化し、全員参加型の営業会議でアイデアが交わされたおかげだ。最近、地元の人たちにも食材を安く提供したいという社員の声を受け「朝市」や「夕市」を開始。「財務体質が完全に良くなったわけではないが、現場のITレベルが格段に上がった」と山室専務。下地が整い、利益を出せる新たなアイデアが生まれそうだ。