「クラウド・コンピューティングの時代」と人は言う。世は既に喧しい。SaaSやPaaSですら最近知った多くの利用者は戸惑うだろう。AmazonやGoogleみたいなものと言われ、分かったような気にもなるが、しかしてその実態は不透明である。

 まずは、アウトソーシングのそもそも論から語りたい。「経営とITは一体だ」「IT戦略が最重要課題だ」といった言葉は、経営者の常套句となっている。その実、ITを使いこなせる経営者は限られ、「ITは分からない」「専門家に任せるしかない」という方が多い。私はいつも「本当に大事なことを他人に任せるか?」という本源的な問いに突き当たる。


 金融機関にとって、福利厚生や輸送はコア業務でないからアウトソーシングが合理的だろう。しかし、「決済機能の提供」は金融仲介と並ぶ本来業務で、決済は情報処理そのものだから、内製が自然とも言える。特に、経営戦略の自由度や競争力を重視する場合には内製優位が動かし難い。理想と現実が食い違うのは世の常だが、基幹システムを外部に全面委託し管理は形骸的というのでは、「使命を果たす気があるのか」疑われても仕方ない。日銀では8月に「金融機関におけるシステム外部委託の現状について」を公表した。委託管理の考え方や課題が詰まっているので、ご覧願いたい。


 さて、本題はそのアウトソーシングの未来系としてのSaaSやクラウド・コンピューティングである。私も、その魅力や将来性には大いに注目し期待している。システムを所有せずサービスとして利用することは効率的だし、それに向いた業務はある。


 しかし、たとえサービス利用型の委託形態であっても、対象が基幹業務である以上はSLA(サービス・レベル・アグリーメント)的な合意に基づく報告や監視など、主体性を持って使いこなすための管理が必要だ。


 時流に抗う主張で恐縮だが、要はどんな委託であれ「IT利用者主権」が肝要と考える。皆が空を見上げ大きな口を空けて待っている。そこにソフトやサービスが降ってくる。これほど楽なことはないが、思考停止の無責任状態に陥っては困る。空から降ってくるのは慈雨ばかりとは限らない。下手をすると豪雨や放射能水となって、やがて大地を枯らすだろう。