次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>79.島津ビジネスシステムズ(上)

2008/11/10 20:42

週刊BCN 2008年11月10日vol.1259掲載

社内ベンチャー制度で新事業

 島津製作所では新しい事業を創造すべく、社内ベンチャー制度を設けている。1997年、この制度を利用して誕生したのが、気象関連事業だった。この気象関連事業は、99年に設立された島津ビジネスシステムズ(上坂至社長)の新事業として本格的に開始した。同社は情報システム子会社として、現在、グループ内向けシステム開発などがビジネスの9割を占めている。

 気象予報士の資格が一般に開放されたのは1994年。奥山哲史・気象グループ 課長は、資格に興味があったことから、気象予報士の資格を取得。その後、気象情報を携帯での配信や、防災関連のソリューションに生かしていきたいと考えたことから、97年、社内ベンチャー制度に応募した。島津製作所は大気計測関連のソリューションはあったが、気象関連事業は手がけていなかった。そんななか、奥山氏は「正式承認ではないものの、一人でこの事業をどこまで進めることができるか、専念する許可を得た」わけだ。


 気象関連事業は、情報産業の領域。奥山氏は、分社化前の情報システム部門に籍だけおいて、その間、テスト的に建設業に向けて、気象情報を配信し、ノウハウを蓄積していった。「中堅のゼネコンに直接話を持っていった。建設作業は、土やコンクリートを使った仕事。雨風、高温の日など、常に気にかけないといけない。現場では雨が降って作業できない日にも工賃が発生することから、気象サービスの恰好のターゲットだった」と振り返る。


 奥山氏は現場の工事長から話を聞くなどし、どういった情報が必要とされているのかを調査していった。気象予報では、常に新しい情報を配信する必要がある。要員は自分一人だから限界がある。24時間、365日かかりっきりになるのは無理な話だ。「徹夜はなかったが、外出した日は夜間などにシステム開発を行った」という。


 99年、島津ビジネスシステムズが分社化。会社が別になれば、ビジネス戦略も異なる。気象予報事業は分社化とともに、本格的に開始した。


 当時、インターネットでかなりの情報が仕入れられるようになっていた。建設向けの情報配信だけでは、ビジネス展開が難しいと、01年には、より低価格でコンシューマで使ってもらうため、携帯向けのコンテンツとして、「J天気ーず」をJ-PHONEの関西地域向けに配信を開始した。


 その後、企業、団体向けに防災用気象監視システム「アメミル」の提供もスタートさせた。(鍋島蓉子●取材/文)

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