特殊金属の“精鋭集団”

 コバルトやニッケル、貴金属など「レアメタル」と呼ばれる特殊金属の加工業界。40人程度の従業員で大企業に相当、多くは10人以下の少人数で営んでいる。全国に多くの業者が点在しており、競争が激しく淘汰が進む。スクラップを安く仕入れて高く売るサイクルを構築するには“長いつき合い”の取引先を多く持つ必要がある。情報量と長年の経験がビジネスに直結することから、社員の年齢層が高い。経営者か社員のなかに必ずといっていいほど“ベテラン”が存在する。こうした人材が社内にいなくなった場合は、生き残ることが難しいともいわれている。

 そんななか、林商会(林正裕社長)は業界に根づく風習を覆し、成長路線の敷設に成功した。同社は、平均年齢が非常に低く、28歳前後ということだ。若い社員を起用したのはIT化による経営革新を図るため。林社長は、「古くからの取引先を確保していることが当社の強み。1973年創業という歴史があって業界で信頼を得ていることが事業を継続できている要因だと思う。加えて、IT化で的確な情報収集が行えるようになり、大きな成長につながった」とアピールする。いわば、特殊金属の“精鋭集団”に変貌したのだ。

 導入したのは、在庫管理と生産管理、経理などが連携する統合基幹システム。社内データと市況を踏まえて分析できる仕組みになっている。レアメタルは価格変動が非常に激しいといわれており、的確な販売時期を試算することが重要になる。一般的には、“ベテラン社員”による長年の経験と勘で販売時期を導き出しているが、同社はデータと数値で仕入れと販売のバランスを確保しているわけだ。システム導入は4年ほど前から。効果は、昨年に売上高が20億円程度となり、「導入前と比べて4倍程度に膨れ上がっている」と自信をみせる。

 システム導入にあたって“縁の下の力持ち”の役割を果たしたのは、大塚有希子・ITコーディネータ。社会保険労務士事務所のFPサポートに所属し、1級ファイナンシャルプランナーの資格も持っている。財務関連を含めた経営改革に定評があり、林社長がイメージしていたビジネスモデル具現化を支援した。「林社長が確固たる経営理念を持っていたため、アドバイスしやすかった」(大塚ITC)と振り返る。実は、林社長は金融機関で商品の売買(ディーリング)で利益を追求するディーラーを経験したことがあったのだ。「特殊金属の市況が金融商品と似ていることがヒントになった」(林社長)としている。林社長のこれまでのノウハウをIT化に生かしたことになる。