整った基盤で前進

 高級時計の修理を中心に、時計販売やテナント展開などを事業として手がける共栄産業は、時計修理事業への選択と集中を行い、顧客との連携強化に向けたビジネスモデルの改革を進めてきた。これが可能になったのは、すでにIT化により修理部門を中心に社内業務フローの改善を実現していたからだ。

 時計修理業界は、“職人の腕”がポイントで、優秀な技術者を多く抱えることが決め手となる。同社の技術者は40人規模に達しており、業界では大手に位置づけられる。新卒採用で入社した若手も多く、ほとんどが専門学校で時計修理を学んできている。そのため、すべての技術者が優れた素質を持っている。小林正博・代表取締役は、「時計修理であれば、どのメーカー製品でも対応できる」と自信をみせる。実際、海外時計メーカーの多くは同社に修理をアウトソーシングしている状況だ。国内メーカーが同社に依頼するケースもある。

 しかし、課題もある。それは技術者の業務フローだ。優秀な技術を揃えていても、こなせる修理には限りがある。同社が修理する時計は、1か月平均3000個。時計修理業界で知名度が高いことから、能力を超えるほどの量で注文が舞い込むこともある。だが、一定水準を超える場合はやむなく「断ることもあった」。そこで、IT化による改善を決断したわけだ。

 IT化を見据えた経営革新に取り組み始めたのは2005年。あるコンサルタントに依頼し、まずは修理現場で「カンバン方式」を採用した。「解体/組み立て」「部品洗浄」「磨き加工」などと、一人の技術者がこなす業務を細分化し、ローテーションで各工程に専門スタッフを配置した。

 修理現場での業務フローが軌道に乗った段階でIT化。修理の進捗、修理在庫などの状況が把握できる管理システムを導入して、07年から稼働を開始した。「これにより、1か月平均でこなせる修理の個数が1.5倍の4500個まで対応できるようになった」と胸を張る。業務フローの改善という「守り」を可視化したことで、一段と業績を伸ばす体制が整った。その時期、IT化を視野に、経営の「見える化」構築に定評のある阿部満・ITコーディネータに出会ったのだ。

 昨年秋からの景気後退で市場環境が悪化、時計販売とテナント展開にもダメージが出ており、大手の同社も少なからず影響を受ける可能性がある。しかし、「整った修理部門の基盤で前進していく」と、“攻めの戦略”に向けた「見える化」を進めている。すでに守りの「見える化」を実現した経緯からみても、必ず成果を手にすることだろう。