2月25日に、セールスフォース・ドットコムが2009会計年度の決算を発表した。年間の売上高は前年度比44%増の10億7677万ドルで、ついに10億ドルを突破した。純利益も4343万ドルで、前年度の2.4倍になっている。また、利用企業数は1年前と比べて35%増の5万5400社、有料利用者数も150万人超であると発表されている。

 

 今回の決算を分析すると、セールスフォース・ドットコムのいろいろな状況が見えてくる。例えば、これまで一貫して増加を続けてきた利用企業1社あたりの利用者数は、今年の1月末は27.1人で、昨年1月末の26.8人からほとんど増えていない。また、売上高のなかに含まれるサブスクライブとサポートの売り上げを利用者数で割ると、正確ではないが、おおよその1人当たりの平均利用料金が分かる。ちなみに、利用者1人当たりの月間利用料金はおよそ55ドルになる。


 1年ほど前の本欄で、SaaSビジネスの粗利率の高さを指摘したが、セールスフォース・ドットコムの2009会計年度の粗利率は79.5%である。これはオラクルの粗利率77.8%(08年5月末決算)より高く、マイクロソフトの80.8%(08年6月末決算)に匹敵する数字である。日本の大手ITベンダーの粗利率が20~30%程度であることを考えると、非常に高い。


 粗利率が高いことは、ビジネスの仕組みを考えれば当然である。ソフトウェアの受託開発を中心とするSIビジネスでは、売り上げの増加はコストの増加を伴うため、売上高が伸びても粗利率が急上昇するようなことは考えられない。しかし、パッケージソフトやSaaSの場合には、売り上げが増加すれば確実に粗利率が向上する。こうした現象は、経済学的には「供給側の規模の経済」と呼ばれる。


 規模の経済が強く働く世界では、規模が大きいほうが競争優位に立つ。つまり、SaaSの場合、利用者数が多いほうが競争力が強くなる。


 セールスフォース・ドットコムの決算をみると、マーケティング&セールスに費やしている金額は、5億3400万ドルを超えている。売上高の約50%に相当する金額を顧客拡大のために投じているのである。この割合を少し落とすだけで、その分黒字を増やすことができるのだが、セールスフォース・ドットコムは、まだ顧客ベースの拡大に力を入れている。それは、SaaSビジネスが、パッケージソフト・ビジネスと同じように規模の経済が強く働くビジネスだからである。