視点

抜本的な年金改正の議論を

2009/09/18 16:41

週刊BCN 2009年09月07日vol.1299掲載

 この8月に、社会保険庁が試算した2008年度の国民年金保険料の実質納付率が45.6%となった。社会保険庁は通常、所得が低くて保険料の支払いが免除・猶予になっている人を未納者とみなし、計算式から除いて納付率を算出する。7月31日に国民年金特別対策本部会議で発表した納付率は、前年度に比べて1.8ポイント減の62.1%と過去最低を更新した。実質納付率は猶予・免除者を含めて保険料を払った人の比率を示すものだが、こちらも3年連続で50%割れという試算結果となっている。

 年齢層が若いほど納付率は低く、20~24歳は24.2%と、4人のうち1人弱しか保険料を払っていない計算で、強制加入の「国民皆年金」は空洞化がますます進んでいる状況である。

 政権が交代(原稿執筆時点は総選挙前)するのをきっかけとして、年金制度の抜本改革の議論が待たれるところであるが、はたして、現状の年金制度を改革することはできるのか。

 現在の年金制度は、現役世代が支払う保険料に国が2分の1負担をして引退世代の年金の支払いに充てるという世代間扶養の仕組みをとっている。2050年には、現役世代の割合1.1に対して引退世代1という、1人で1人を支える人口構造になることが見込まれている。こういったなかで、世代間扶養の仕組みを維持すること自体が困難になるのではないのか。また、厚生年金制度は戦時中に構築された制度を補修しながら続けており、現在の雇用環境や、家族の状況などにマッチしていない制度になっている。

 さらに、消えた年金記録が見つかるとすれば、その支払いも増加することになる。年金の年間の支給額は50兆円(平成元年当時は20兆円程度)近くになってきている。

 総務省が毎年調査している国民の不安の第一位は、このところずっと「老後生活」である。「老後生活の不安を解消できるような安心できる年金制度の維持のためには消費税などの負担増もやむを得ない」とのコンセンサスは、すでにできているのではないのか。 消費税率の引き上げという、政権維持のためにはマイナスとなる政策に怯えるのではなく、本当に安心できる年金制度や社会保障制度の改革こそが、真の景気回復の切り札になると考えるのは私だけだろうか。

 老朽化した、年金をはじめとする社会保障制度の再構築を切に望む。
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