地場有力ITベンダー 未来を語る

【石川県】石川コンピュータ・センター 医療向けシステムに強みを発揮

2009/10/09 20:42

週刊BCN 2009年09月28日vol.1302掲載

 「地域活性化に地場ITベンダーの果たす役割」とは何か。創刊1300号を数えた「週刊BCN」では、このテーマを掲げて全国巡回取材を敢行し、47都道府県の有力ベンダーの代表者からナマの声を拾った。最終回となる第4弾をお届けする。  地域経済格差が広がるなかで、地場の中堅・中小企業を活性化させる“源流”となるのはITであることを確信している。地場ITベンダーが地域活性化で果たすべき役割はますます大きくなっている。はたして各社は、この重要な役割にどう応えているのか──。

多田和雄 社長
 当社の強みは、医療向けITシステムにある。NECのビジネスパートナーとして、石川県の医療IT市場におけるNEC陣営のトップシェア堅持に貢献してきた。全国の医療IT市場でみると、富士通がシェアで勝るものの、石川ではNECと富士通のシェアが逆転している。当社の売上構成比でみると、医療と市町村などの公共分野が全体の約6割、製造業などの民需は約4割と、公共系に強い。

 輸送機や精密機械メーカーが多く集まる石川県は、昨秋以来、輸出型製造業の不振が深刻だ。その影響を受け、今年度(2009年9月期)売上高こそ、大型プロジェクトがあったことから昨年度とほぼ横ばいの78億円前後の見込みだが、下期(09年4~9月期)の民需市場での受注高は伸び悩んでいる。民需への過度の期待はできない。

 底堅いのは医療分野だ。県内病院の電子カルテの普及率は2~3割とまだ低い。医療費の抑制が叫ばれるなか、ITを活用した効率化への需要は今後も拡大余地が大きい。

 課題は、一過性のSIではなく、安定収益基盤であるストックビジネスをどう伸ばすかにある。例えば、大病院や中堅病院・診療所が電子カルテなどの情報を共有し、地域全体で医療体制を支える“地域連携”が盛んに模索されている。連携にはデータを蓄積するデータセンター(DC)やネットワークが欠かせない。当社は、アウトソーシングなどで培ってきたDC運用やネットワーク技術を生かし、医療の地域連携システムの運用案件によるストックビジネス化を視野に入れている。

代表者…多田和雄 社長
売上高…78億円(単体)
利益率…公表せず
主要顧客…公共、医療、製造など
ハードとソフトの比率…3:7
県内・県外比率…7.5:2.5
 現時点では、電子カルテなどの個人情報を外部のDCに保管しにくい制度だが、今後の規制緩和によってはストックビジネスのチャンスになる可能性がある。近年注目が集まるクラウド/SaaS型のストックビジネスは、規模の理論が強く働き、小規模での採算性は困難が伴うだろう。しかし、地域医療などは専門的で、地域に密着したサービスが求められる分野は別だ。地域のSIerとしての力量を最大限発揮することで、ビジネスを伸ばしていきたい。
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外部リンク

石川コンピュータ・センター=http://www.icc.co.jp/