ウェブ販売でさらに拡販

 ITコーディネータ(ITC)で中小企業診断士の宇田名保美氏が、精肉店を経営する平山牛舗(平山敏明代表取締役)に惚れ込んだのは、「美味しい肉を安心して食べてもらいたい想いで販売している」点だ。平山牛舗は、味で名高い但馬牛(神戸ビーフ、松阪牛、近江牛の素牛といわれる)を中心に扱っているのが売りだ。国内産の良質な牛肉や豚肉も扱っている。

 お客に人気があるのは、価格がリーズナブルであること。例を挙げれば、但馬牛の「ロース」が100グラム900円から、ロースステーキが100グラム1300円から、ヒレステーキが100グラム1500円からなどといった具合だ。牛のこま切れやミンチなどは100グラム280円。ホルモン(腸やセンマイ、ミノ、心臓など)も販売しており、和牛で500グラム1250円、但馬牛で1750円に設定している。こうした価格で提供できるのは、昔ながらの畜産方法を採用しているからだ。「子牛市」で8か月程度の子牛を購入し、委託契約農家で丁寧に大切に育ててもらう。もしくは品評会で成牛を購入する。こうした高品質な肉を平山牛舗の職人が部位ごとに分ける小割り作業を行う。「牛一頭」の頭から尻尾までを扱い、しかもリーズナブルな価格で販売できるわけだ。

 「良心的な店として成長してほしい」と宇田ITCは願う。平山牛舗でウェブ運営を担当している社長夫人の平山久美子さんも、「もっと多くの人に食べてもらいたい」と考えている。そこで、インターネットを活用した経営革新を図ることになったのである。宇田ITCは、「経営塾」と呼ばれる講座を開催している。久美子さん以外にも周辺地域の主婦が参加して、経営だけでなくインターネットの使い方などを宇田ITCが分かりやすく講義するというものだ。「堅苦しい雰囲気ではなく、皆で気軽に習得できるような会にしたい」と宇田ITCは説明している。

 宇田ITCによるウェブへのアドバイスや「経営塾」などを通じて、久美子さんは「ウェブを活用してビジネスを拡大できないか」と模索し始めている。これまでは、来店者の増加を想定していたため、あえてウェブでの商品販売を手がけてこなかったが、「多くの人に当店の肉を評価してもらうのであれば、ウェブショッピングを開始するのもいいかもしれない」と考え始めた。そこで、宇田ITCは「まずは期間限定で試すのはどうか」と提案している。カートの設置などウェブ販売の仕組みについては、「商工会が無料で提供しているものを使えば投資を抑えることが可能」とアドバイスしている。

 平山牛舗はウェブ販売という新しいビジネスモデルを認識し始めたわけだが、これはITCと出会ったからこそといえるだろう。ホームページを立ち上げたことで問い合わせが殺到しただけでなく、来店者や取引先が増加しただけに、ウェブ販売はビジネス変貌の大きな可能性を秘めている。小規模ながらも実力のある店が、今まさに開花しようとしている。(次回は安久工機)

平山牛舗では、但馬牛を中心に良質な肉をリーズナブルな価格で提供している