視点

IT業界は労働法令の改正に注目すべし

2010/02/04 16:41

週刊BCN 2010年02月01日vol.1319掲載

 政府は2009年12月30日、2020年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る成長を通じ、2020年の名目GDP650兆円(09年度473兆円)の新成長戦略を発表した。今回の新成長戦略においては、戦略分野として六つが掲げられているが、ここでは、人事・労務面でのきわめて影響が大きい分野を取り上げてみたいと思う。

 政府がとくに強調しているのは、「ディーセントワーク(人間らしい働きがいのある仕事)」の実現に向けて、「同一価値労働同一賃金」に向けた均等・均衡待遇の推進、給付付き税額控除の検討、最低賃金の引き上げ、ワーク・ライフ・バランスの実現(年次有給休暇の取得促進、労働時間短縮、育児休業等の取得促進)に取り組むという点である。

 4月1日施行の改正労働基準法で、時間単位の年次有給休暇制度が始まるのを皮切りに、6月には改正育児・介護休業法が施行される。内容としては、(1)3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の措置の義務化、所定外労働の免除の制度化、(2)子の看護休暇の拡充、(3)男性の育児休業取得促進策(パパ・ママ育休プラス等)、(4)介護休暇の創設である。(1)と(4)については100人以下の企業は猶予期間が設けられている。

 さらに、通常国会では、労働者派遣法の改正が予定されており、(1)製造業派遣では派遣元と雇用関係にある「常用型」派遣を除いて禁止する、(2)仕事がある時だけ働く「登録型」派遣についても専門職などを除き禁止するといった内容だ。あまりにも影響が大きいため、雇用情勢や企業活動への影響に配慮して経過期間を設け、改正法案は公布日から3年以内に施行するとしている。以上のほか、雇用保険も改正が予定されている。

 このように労働法の改正が今後も実施されていくので、企業としての人事・労務政策も大転換する必要がある。現に、人材派遣会社は派遣以外の業務に軸足を移している。派遣業から撤退して請負に転換したり、外食店舗への派遣を運営受託に切り替えたりといった動きである。

 まだ、新政権発足後6か月程度しか経過していない段階でも、このようにビジネスモデル自体が変わる可能性が出てきた。仕組みが変われば、システム構築の必要性も出てくる。改正労基法の施行はシステム開発会社にとっては、一つのビジネスが生まれたことになる。

 大転換期の人事・労務分野は、IT業界にとっての注目分野といえよう。
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