視点

地方発の「異文化交流を支援するミッション」

2011/09/01 20:45

週刊BCN 2011年08月29日vol.1396掲載

 数年前まで異文化交流がグローバルな日本づくりには不可欠だと叫ばれていた。だが、なぜか今では、そのような社会文化事業は過去のこととして忘れ去られ、追い討ちをかけるように、東日本大震災の後には日本そのものが忌避される対象になってしまった──ちょっと自嘲気味にいえば、こういうことになる。にもかかわらず、円高だが……。

 そんな状況にあっても、インターネット環境では、それを支える技術がどんどん進化して、ソーシャルメディアがますます強い社会的影響力をもつようになった。なので、外国人との交流についても、日本全体としては静かになっても、意外と地道にしかも楽しそうに異文化交流をやっている人たちが、情報政策を重視する地方には存在する。岐阜のソフトピアにも、ぜひ紹介したい動きが一つある。

 ソフトピアのセンタービルの9階に、「うぶすな」というベンチャー企業がある。そこは、最近、岐阜県の緊急雇用政策を受けて、在日ブラジル人向けのUstream番組を制作し、地域に暮らすブラジル人の支援を行い、大いに好評を得ている。このブラジル・ギフ多文化共生ウェブサイトは、地元のベンチャーの精鋭たちが自分のもっているスキルを出し合い、一挙に立ち上げたサイトである。狭いエリアということもあって、ちょっとした出会いがあるだけで、話はとんとん拍子で進んだという経緯がある。企画が面白そうで、加えて小さな社会貢献活動でもあったので、あっという間にサイトが立ち上がることとなった。

 ソフトピアでは、今、多くの優秀なスキルをもった若い人材が、モバイルカフェなどのようなIT関連のコミュニティで活発に活動している。ここでは、今回のように異文化交流のコミュニティサイトを立ち上げようと、誰かが声をあげれば、仲間が自然とフリーな立場で集まってくる。このような活動は、もう不思議でもなんでもなく、ごく自然な流れとなっている。たぶん数年前ならば、夢物語であったのに、今ではそれが当然の出来事のように認識され、すぐに実行される。

 岐阜のような地方だからこそ、機動的な協働関係が生まれやすく、地方から異文化交流を支援するミッションが簡単に実現される。これもネットワーク時代の先頭を走る若い人材からのプレゼントなのである。
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