視点

クラウドサービスを使うべき理由

2011/11/17 16:41

週刊BCN 2011年11月14日vol.1407掲載

 クラウドサービスを使うべき理由を他人からたずねられたとき、皆さんはどのような答えを用意されているのだろう。私の周りの人々にこの質問をしたところ、誰もが考え込んでしまって、明快な答えが返ってこなかった。というわけで、今回は、クラウドサービスの利点について考えてみる。

 まず、経費面での利点としては、「廉価で、あるいは無料で利用できる」「ITシステム導入のための機器等の直接費用はもちろん、人件費等の間接費用も削減できる」「いつでも使えて、いつでも止められるので、運用経費を抑えた効果的なITの活用が可能になる」「IT投資を資産としてではなく、経費として処理できる」などが挙げられる。導入・運用面では、「まず使ってみてから採用を決めることができるので、ニーズに合わないITシステムを選択するリスクが減る」「スケーラブルである。つまり、需要に応じて処理能力を随時増強あるいは削減できる」「IT資源調達のための所要時間を大幅に短縮できる」というところであろうか。

 ビジネス環境の変化への対応という観点からは、「顧客ニーズに応じてITシステムを素早く立ち上げることができる」「常に最先端の技術やサービスを利用することができる」「企業間統廃合、企業内組織変更に応じたITシステム更改を柔軟に、かつ短期間でできる」などがあり、「時間、場所、機器に束縛されないITシステムの利用が可能になる」ので、在宅ワーク、モバイルワークなどの就労形態に柔軟に対応できるうえ、人材の調達という観点からクラウドソーシング、すなわち集合知の活用が容易になる。また、パソコン内にアプリケーションやデータを保持する必要がなくなるので、災害などでパソコンが壊れても、盗難などでパソコンを失っても即座に別のパソコンを使って作業を継続することができることから、BCP(事業継続計画)対応策として大変有効である。さらに、電力消費抑制効果やCO2削減効果なども期待することができる。

 このように、クラウドサービスを使うべき理由は実にたくさんある。だが、これで十分というわけではない。これから先のクラウドサービスに求めるべきこととして、ニーズに合った機能や性能を備えたサービスを多彩な品揃えから自由に選択でき、かつそれらサービスの間を自由に移行でき、種々のサービスを組み合わせて新たなサービスを廉価に開発できることなどの利便性が当たり前に提供されるようになることを期待したい。

一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫

略歴

松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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