視点

モバイルトラフィックをオフロードせよ

2012/03/08 16:41

週刊BCN 2012年03月05日vol.1422掲載

 過日、NTTドコモの通信回線障害が起こり、通信、通話が繋がらない状況に陥った。理由はスマートフォンの急速な加入者数増加とそれによるデータトラフィックの爆発的な増大により、設備リソースがひっ迫してトラフィックを処理しきれなくなった結果だという。MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)の予測によると、スマートフォンの普及は個人向けで年率50%以上、法人向けでも30%を超える成長率だといわれている。

 総務省が先日発表した統計値によると、携帯電話とPHSの総契約台数がおよそ1億2987万台に達し、日本の総人口を初めて上回ったという。「一人2台持ち」の時代に突入し、さらに大量のデータをやりとりするスマートフォンが普及していくことで、ネットワークに対する負荷はますます増えていくことは想像に難くない。例えば、シスコが2011年に発表したトラフィック予測によると、2012年には月間0.24エクサバイトだったモバイルデータトラフィックが2015年時点では月間6.3エクサバイトを超えるという。年平均成長率92%という驚異的な伸びであり、回線収容効率が現状のままならば、設備投資を数年に1回、倍々ゲームで増やさなければならないことになる。当然ながら通信事業者に財務インパクトを与えるので、ユーザーへの転嫁として定額料金制の見直し論が現実のものとなってくるわけだ。それも、普及と抑制の二律背反する施策だけに、状況をみながらの判断とならざるを得ない。

 設備産業が抱える過剰投資のサイクルは行き着くところまで行くと、それ以上の投資余力がない企業も現れ始め、古い世代にレイドバックせざるを得ないことはこれまでの歴史が証明している。例えば半導体業界も製造設備に巨額の投資をせざるを得なくなったが、投資回収できるアプリケーションの少なさから2~3世代前のチップセットの組み合わせビジネスが開花した。液晶パネルも大型が儲からない一方で、スマートフォン向けやタブレット向けの小型パネル需要が急増している。

 今後数十年で人口が減りゆく日本という国における設備増強については、ますます難しい舵取りが必要となる可能性が極めて高い。その際に最も高速で収容効率のよいモバイルネットワークや固定回線と組み合わせるFMCはもちろんのこと、各社が取り組むWi-Fiサービスなど、データ負荷を下げるためのオフロード施策を多数用意することが喫緊の課題となろう。
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