燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> ジェスチャー認識に可能性を見出した倉敷中央病院――全NEC C&Cシステムユーザー会

2013/11/25 20:28

 「入力デバイスを改善したい」。倉敷中央病院は、医療の現場でIT化の効果が現れにくい原因の一つとして、「入力デバイスの進化の遅れ」があると考えた。そこで着目したのが、入力デバイスとしてジェスチャー認識だ。まずは院内の案内板と手術室に導入して効果を実感した病院は、院内外に向けた新たな展開を視野に入れている。この取り組みをまとめたユーザー事例論文が、NECのユーザー会「NEC C&Cシステムユーザー会(NUA)」で平成25年度の最優秀賞に選ばれた。

ゲーム機用コントローラを採用

 総務省が2012年3月に発表した「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」によると、医療従事者・医療事務従事者の労働時間短縮にITはさほど貢献していないという。それを見た倉敷中央病院 情報システム部 情報システム課の藤川敏行課長は、改善策としてマウスやキーボードを使わない方法を模索した。入力デバイスに問題があると考えたからだ。

 この思いをNUAで打ち明けると、NECがマイクロソフトの「Kinect」を紹介してくれた。Kinectは、もともとマイクロソフトのゲーム機「Xbox 360」用に開発されたジェスチャーや音声認でゲームを操作するコントローラ。12年2月にWindows用の開発キット「Kinect for Windows」がリリースされたことで、ゲーム以外に活用するための環境は整っていた。ちなみに、Kinectは人間の骨格を認識する仕組みで、指先の細かな動きには対応していない。そこで、NECシステムテクノロジーが開発した指先の微小な動作を認識する「フィンガージェスチャー」を組み合わせて活用している。

案内板をジェスチャーで操作

 「世界水準の医療を地域住民に提供」をミッションとする倉敷中央病院は、1日平均の外来患者数が2719人、病床数は1161床、職員数が2779人(いずれも2012年度)という岡山県倉敷市を中心とする地域の基幹病院だ。つき添いや見舞いなども入れると、1日あたりの訪問者は1万人と推定されるほどの規模で、院内は広く、目的地へ向かうには案内掲示板が欠かせない。ところが、一般的な病院と同様、倉敷中央病院では見取り図のような案内掲示板を設置している程度で、訪問者にやさしいとはいえない状況だった。

 藤川課長はそこに目をつけた。「院内は改装を行うことも多く、行き先に迷う人は少なくなかった。そこで、利用者がジェスチャー操作で知りたい情報に簡単にアクセスできる案内掲示板を用意したらどうかと考えた」。制作にあたっては、小児から高齢者までの幅広い年齢層で使いやすいよう、操作の単純化に徹底的にこだわった。また、情報提供の幅が広がるよう、外来の待ち時間を快適に過ごすことができる院内施設の紹介や、イベントの紹介などの表示にも対応している。

 病院ならではのメリットもある。ジェスチャー操作はタッチパネルとは違い、画面を触る必要がないことから、接触感染によるリスクを排除できるのだ。

手術室でもジェスチャー操作

 倉敷中央病院で行う手術は年間12000件と、国内トップクラス。手術が夜間まで続くことも少なくないために、手術室の医療スタッフには多大な負荷がかかっている。そこで藤川課長は「手術室にもジェスチャー操作を導入することで、医療スタッフの負荷を少しでも軽くしたい」と考えた。

 手術室で医療画像ビューアを操作する場合、清潔な環境を保持するために、執刀医が入力デバイスに触れることはできない。そのため他のスタッフに口頭で操作を指示するか、専用のシートをかけて操作することになる。「これが執刀医にとっても、他のスタッフにとっても大きな負担だった」(藤川課長)。

 そこにジェスチャー操作を導入したことで、執刀医がストレスなく画像操作ができるようになり、画面操作を代行していたスタッフは本来業務に専念できるようになった。ちなみに、画像の縮小や拡大、画像送りといった操作が指先でできるので、タブレット端末感覚で医療画像を活用できる。

今後は異業種にも

 さらに藤川課長は、Kinectの効用を「Kinectは骨格を認識するので、プライバシーの保護が必要な場面でも適用できる」と語る。今後は院内で転倒した患者の発見に活用したり、在宅の高齢者の安否を確認したりするなど、適用分野を広げていく考えだ。また、システム開発の当初から「どのような業種にも応用して利用できるシステムを目指した」(藤川課長)ことから、医療分野以外にも積極的に紹介していきたいという。これは、ユーザー事例論文に応募した動機にもなっている。

 倉敷中央病院の取り組みは、11月14日と15日の2日間、東京国際フォーラムで開催されたNUAとNECが主催する「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2013」で、藤川課長が発表した。このほか、NUAの1年間の活動成果やユーザー事例論文などの発表の場として17のセミナーが開かれた。

C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2013で最優秀賞に輝いたユーザー事例論文を発表した
倉敷中央病院 情報システム部 情報システム課の藤川敏行課長
  • 1

関連記事

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> もしユーザー会でドラッカーを学んだら――日立ITユーザ会

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> ユーザー企業の共通課題に力点――EMCジャパン ユーザ会

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> 国内最大規模の“熱い”ユーザー会――全国IBMユーザー研究会連合会

外部リンク

NEC C&Cシステムユーザー会=http://www.nua.or.jp/

おすすめ記事