富士通が示した新しいインテグレーションのコンセプト「FUIJITSU Knowledge Integration」。強みとなるのは、同社が50年にわたって蓄積してきたシステムインテグレーション(SI)の知見・ノウハウだ。しかし、これだけでは、従来のビジネスと比べて大きな成長を見込めるわけではない。ユーザーやパートナー、サードパーティーベンダーの力も取り込んで、「共創」を実現するための舞台をクラウド上に用意した。クラウドビジネスでは出遅れたようにもみえる富士通だが、本気で巻き返しを図ろうとしている。(本多和幸)
前回説明した通り、従来の業務システムなどを指す「Systems of Record(SoR)」と、モバイル、ソーシャル、IoTなど、人や物をつなぐ比較的新しい領域のシステム「Systems of Engagement(SoE)」を融合することで、顧客の競争力を強化し、新しいビジネスの創出に貢献できるソリューションの提供を目指すのが、FUIJITSU Knowledge Integrationの基本的な考え方だ。既存システムの保守・運用に多くのIT予算を割く“守りのIT投資”から、経営力向上のためにITを活用する“攻めのIT投資”に顧客がマインドシフトするような画期的な成果を世に示そうという狙いがある。

柴崎辰彦
統括部長 ただ、当然ながら、こうしたイノベーションは、従来のシステム開発の延長で実現できるわけではない。重要なのは、確かな強みではあるものの、あくまでも「閉じた領域の知見」に過ぎなかった同社のSIのノウハウを横断的に連携させ、さらにユーザーや外部の知見とも組み合わせることだという。柴崎辰彦・インテグレーションサービス部門戦略企画統括部長は、「SEは富士通の大きな資産だが、業種業態ごとに縦割りで業務をこなしてきた部分がある。これを横断的に連携・融合させるための専任組織『業種コラボレーション統括室』を設置するなど、組織の変革を進めている」と説明する。
一方で、知見・ノウハウを連携させるためにはテクノロジーの器も必要になる。そこで富士通は、FUIJITSU Knowledge Integrationを実現するための新しいプラットフォームとして、「デジタルビジネスプラットフォーム(DBPF)」の提供を始める。SoRに対する単独のニーズをみても、従来より環境の変化に素早く対応できる開発のスピードや運用の柔軟性が求められているし、SoEには、常に新しいイノベーションの価値を世に問う役割が求められている。
こうした市場環境を考えれば、このプラットフォームはクラウドを前提としたものになるのが必然だ。パブリッククラウドのIaaS/PaaSである「K5」や、プライベートクラウド向けの垂直統合型製品「PRIMEFLEX for Cloud」などが、その中核を担うことになる。