オープンソースソフトをベースに、システム開発や導入サービスなどを強みとするアイティテラ。OSやデータベース、ミドルウェアだけでなく、ERPやCRMといった業務系ソフトを取り扱っている。とくに業務システムについては、オープンソース市場が未開拓であったことから、先行者利益を享受するかたちになっている。とはいえ、創業時はSIerの下請けが中心だったアイティテラ。転機となったのは、東日本大震災だった。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 アイティテラ
所在地 東京都港区
資本金 1500万円
設立 2002年10月
社員数 30人
事業概要 オープンソースソフトウェア導入サービス、オープンソースソフトウェア開発、レスポンシブウェブデザイン制作
URL:http://www.it-tera.com/ 創業当初はSIerの下請け

秋山 忠
代表取締役社長 「SIerの下請けは、事業が安定しやすいという点で魅力がある。ただ、朝から晩まで開発しているだけでは、社員も会社も成長できない。ユーザー企業と直接の取引ができれば、マネージメントや提案力といったことが身につく。ラクではないが、社員も会社も成長できる」と、アイティテラの秋山忠・代表取締役社長は言う。
今でこそ、ユーザー企業と直接の取引ができているアイティテラだが、創業から8年ほどはSIerの下請けをしていた。スタートアップ時には、やはりSIerの下請けのほうが事業を安定させやすい。ただ、下請けゆえの脆さもあった。
「突然、契約を切られてしまう。そんなひどい目に何度もあった。下請けとはそういうものかもしれないが、このままではやっていけないと思った」。リーマン・ショック以降、そういったことが起きるようになったという。そこに東日本大震災が追い打ちをかける。
「電力関連の開発案件にかかわっていたが、東日本大震災で突然契約を切られてしまった。元請けのSIerが負うべきリスクのはずだが、結果的に下請けにまわってくるという感じだった」と当時を振り返る。これを契機に秋山社長は、SIerの下請けからの撤退を決めた。
オープンソースにシフト
SIerの下請け脱却を決めたときに、秋山社長はユーザー企業をターゲットとするビジネスに軸足を移すことを考えた。つまり、元請けになるということである。ただ、営業力や信用力などが必要とされるなど、参入するのは簡単ではない。そこで目をつけたのが、オープンソースソフトだった。
「今でこそオープンソースソフトが受け入れられているが、4年ほど前に参入した当時は“オープンソースで本当に大丈夫”とよくたずねられた」と、秋山社長。また、アイティテラとしても、オープンソースソフトのノウハウがなかったことから、参入からの3年間は受注したプロジェクトのほとんどが赤字だったという。それを支えたのは、元請けの案件だった。「リーマン・ショック以降、SIerとの取引を見直すユーザー企業が出てきたため、当社のような規模の企業にもチャンスがまわってくることがあった」と秋山社長は当時を振り返る。
そうしたなかで、オープンソースソフト関連の引き合いが徐々に増えていくことになる。「リーマン・ショックや東日本大震災で、システム開発コストを見直す企業が増えて、オープンソースソフトが注目されるようになった。営業をかけなくても、ホームページに情報を載せていくだけで、問い合わせがくるようになった」。オープンソースソフトの取り扱いを始めてから3年間は赤字だったが、その後はノウハウを蓄積し、黒字化に成功している。「たまたま元請けの仕事が取れたからよかったが、それがなければ会社として生き残ることができなかった」と語る秋山社長は、その苦労を知るだけに、オープンソースソフトに関するノウハウには自信をもっている。
マニラに開発拠点
アイティテラは、フィリピンのマニラにオフショア開発のための現地法人をもっている。知人がマニラでビジネスをするときにコンサルティングでかかわったのがきっかけだという。
「そのときにフィリピンは何かを売り込むのではなく、こちらから与えたほうがビジネスになると学んだ。英語で会話できるので、オフショア開発に向いていると考えた」。現在の社員数は15人。大学で情報学を学んだ優秀な学生が、社員として働いている。フィリピン現地法人では、オープンソースソフト関連の開発も行っているという。
アイティテラの今後については、オープンソースソフトの展開をさらに強化していく予定。そのため、現在は30人の社員を、50人程度まで増やすことを目指している。「中途採用よりも、新卒者を積極的に採用して、育成している」と秋山社長。将来のオープンソース市場を担う人材をアイティテラで育てていく考えだ。