前回紹介したインフラの最適構成を自動的に設計・構築できる「システム自動構築サービス」以外に、「K5」のPaaSにはアプリケーション開発そのものを強力に支援する機能も備える。SoRとSoEの両方をカバーし、しかもシームレスにつなぐことができるサービス群を用意し、他社サービスとの差異化を図った。(本多和幸)

中村記章
デジタルビジネスプラットフォーム事業部副本部長 SoRのアプリケーションを開発・実行するためのサービスとして提供予定なのが、「基幹業務基盤サービス」だ。中村記章・デジタルビジネスプラットフォーム事業本部副本部長は、「SoE向けのPaaSはいくつかあるが、SoRをしっかりつくるための開発実行環境を提供できるのは、K5の大きなセールスポイントだと考えている。まさに基幹系システム開発プロジェクトの現場でつくりあげたフレームワークを存分に注入したサービス」だと説明する。
従来、SoRはウォーターフォール型でしっかりと仕様を決めて開発してきたが、K5の基幹業務基盤サービスは、アプリケーション開発を手作業で行うのではなく、ほとんどのプロセスを自動化できるようにした。中村副本部長は、「リポジトリというデータベースのなかに、プログラムの構造やデータの関係性などのロジックを定義することによって、プログラムを自動生成できるようにした。さらに、アプリケーション開発・実行後のメンテナンスにしても、リポジトリの情報から修正すべき箇所が簡単にわかるようになるので、効率性を飛躍的に高めることができる」と解説する。また、基幹業務基盤サービスを使うと、SoRのAPIを自動的に定義できるので、SoRとSoEをK5上でシームレスに連携させることも容易だという。
富士通は現在、社内システムをK5上に移行しているが、実際にこれまでのSoR開発と比べて、「開発期間が3分の1になったり、生産性が2倍になったりという効果が現実のものになっている」と、中村副本部長はメリットを強調する。
一方で、SoE用には、オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」ベースの基盤サービスも提供する。これは、IBMの「Bluemix」などとほぼ類似のサービスだ。マッシュアップ型でさまざまなサービスを組み合わせてアプリケーションを簡単に構築できるようになっている。Java、Ruby、Pythonなど多様なプログラミング言語にも対応している。
「一般的にPaaSは、ミドルウェアをサービス化したものが非常に多いが、K5は、エンジニアリングをPaaSに仕立てたサービスであるといえる。人手を介したエンジニアリングは、なかなかサービスとして抜き出せなかったが、それをようやく実現できた。単なるミドルウェアを従量課金で提供するサービスではなく、知見をしっかりみんなが共有して活用できるものに仕上がっている」(中村副本部長)。