国産No.1ベンダーの挑戦
<世界とどう戦う?国産No.1ベンダーの挑戦【企業研究 富士通編】>第8回 多くのSIerをエコシステムに迎え入れる
2015/10/22 20:28
週刊BCN 2015年10月19日vol.1600掲載
前回までは、「K5」の機能としての差異化要因を探ってきたが、パブリッククラウドのIaaS/PaaSは、グローバル大手ベンダー各社が先行する市場だ。機能面でのメリットをアピールするだけでは、彼らに割って入るための取り組みとしては不十分だろう。富士通は、K5をメガクラウドに互するサービスに育てたいという明確な意図をもっており、拡販のための戦略も大胆かつ慎重に練っている。(本多和幸)
富士通はK5のほかに、専用物理サーバーと同等の操作性、安全性、信頼性の実現を目指したパブリック型IaaS「Trusted Public S5」や「Microsoft Azure」に富士通独自の味付けを施した「A5」をはじめ、すでにいくつかのクラウドサービスを提供しており、当面は、既存のサービスとK5を並行して運営することになる。中村記章・デジタルビジネスプラットフォーム事業本部副本部長は、「三階層モデルの構築はS5のほうが簡単で、従来型のオンプレミスのシステムをクラウドに移行しやすかったりするし、マイクロソフト製品との親和性を重視するとA5が合うお客様もいる。クラウド戦略の中心がK5であることにかわりはないが、適材適所の商材をインテグレーションや運用も含めて提案していく」と説明する。ただし、将来的にはK5以前のクラウドサービスを、K5ブランドに発展的に統合していくことも視野に入れている。 K5の拡販戦略で注目すべきは、「富士通グループのSEのためだけのものではなく、エコシステムを従来の富士通のビジネスとは違うレベルで大きく広げたい」(柴崎辰彦・インテグレーションサービス部門戦略企画統括部長)と構想している点だ。富士通のグループ会社や既存の富士通パートナーなどの既存の販売網にとらわれず、クラウド上でのシステム構築を積極的に手がけたいと考えているSIerなどを、広くパートナーとして迎え入れようとしている。柴崎統括部長は、「エンタープライズのニーズにきちんと応えられるクラウドを提供する国産ベンダーは、もはや富士通しかないと思っている。エコシステムを拡大していくためのパートナープログラムも検討している」と話す。 また、価格をAWSなどメジャーなパブリッククラウドサービスと同水準にするという方針も示している。インフラのスケールがものをいうパブリッククラウドの世界で、後発の富士通が、機能面で差異化を図りながらコスト面での競争力を維持することは可能なのだろうか。中村副本部長は、「もちろん可能だ」と胸を張る。仕組みは、こうだ。「富士通自身が社内システムをK5に移していることは説明したが、これまで社内システムを運用するためのコストが1000億円位かかっていた。ハードだけでなく、運用要員やファシリティ、ヘルプデスクなども集約・統合することでかなりコストダウンできる見込みで、浮いたコストをお客様に還元して、K5を低コストで提供できるようにする。決して持続不可能なモデルではない」。 K5を提供するデータセンターも、まずは東日本リージョンで立ち上げ、国内の他地域、海外にも徐々に拡充し、ユーザーが国内外でロケーションを意識せずに利用できるサービスに仕上げていきたい考えだ。
前回までは、「K5」の機能としての差異化要因を探ってきたが、パブリッククラウドのIaaS/PaaSは、グローバル大手ベンダー各社が先行する市場だ。機能面でのメリットをアピールするだけでは、彼らに割って入るための取り組みとしては不十分だろう。富士通は、K5をメガクラウドに互するサービスに育てたいという明確な意図をもっており、拡販のための戦略も大胆かつ慎重に練っている。(本多和幸)
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