パブリッククラウドのIaaS/PaaS「K5」をコアにした「デジタルビジネスプラットフォーム(DBPF)」が、富士通のITビジネスの最重要基盤となることはすでに説明したとおりだが、DBPFを活用した新たな取り組みも、すでに具体化している。その代表的な領域が、2015年、最も旬なキーワードともいえる、IoTだ。(本多和幸)

大澤達蔵
シニアディレクター 富士通は、IoTで何が可能になると考えているのか。大澤達蔵・ネットワークサービス事業本部IoTビジネス推進室シニアディレクターは、次のように説明する。「ビッグデータはIoTによって新しい段階に到達し、企業に新しいビジネスのかたちをもたらすことになる。例えばモノを売ろうと考えたときに、どんな商品がどのように売れるかを予測するのは難しいが、これまでは、B2B2Cの“C” のような最終利用者の動向を、ソーシャルメディアなどを通じて把握しようと努めてきた。IoTの世界が広がると、それに加えてセンシングにもとづくデジタルな情報をキャッチできるようになり、より正確に最終利用者のニーズを把握し、これをフィードバックして商品を継続的に改善するというようなビジネスにトランスフォームできる」。
最終利用者に新たな価値をどう提供するかという視点にもとづいてシステムを考えるという意味で、富士通は、全社的な方針である「ヒューマンセントリック」の重要性を、IoTのビジネスでも前面に押し出している。そして、IoTのシステムは、これまで富士通が得意としてきた基幹系のシステムとは違うフロント側のシステムであり、典型的なSoE(Systems of Engagement)のシステムでもある。大澤シニアディレクターは、「フロントの数だけバリエーションやビジネスモデルが存在するので、富士通がエンド・トゥ・エンドで型を決めて提供するというのは非常に難しい。富士通はさまざまな技術要素を提供していくが、それらを具体的にどんなシーンで利活用していくのか、当社にとってのお客様と一緒に、新しいビジネスのかたちを共に創っていくことが大事だと考えている」と説明する。そのための方法論として、新しい概念の実証であるPoC(Proof of Concept)にとどまらず、事業化プロセス確立のための検証にまで踏み込んだPoB(Proof of Business)を積極的に推進したいとしている。