
本田 隆
取締役 お金の流れを捕捉し、より適正な課税を行うマイナンバー(社会保障・税番号)制度の特性は、給与計算の業務と深い関連性がある。これを裏付けるかのように給与計算業務のアウトソーシングを手がけるぺイロール(湯淺哲哉社長兼CEO)が打ち出したマイナンバー管理サービス(マイナンバーBPO=ビジネスプロセス・アウトソーシング)は、この9月末までに100社余り、従業員数ベースでは約93万人分の受注を果たした。
ぺイロールは直近で240社、従業員数約86万人分の給与計算のアウトソーシングを手がけている給与の受託計算大手として有名だが、マイナンバーBPOの100社余りは本業である給与計算とは別の「まったくの新規での受注」(本田隆・取締役ソリューション本部本部長)というのだから驚きだ。既存の給与計算の顧客は、その業務の仕組み上、必然的にマイナンバーも合わせてぺイロールが管理することになるため、同社が手がけるマイナンバーBPOは既存と新規の顧客の単純合算で実に340社余り、約179万人分に達することになる。

新北海道BPOセンターの外観 同社では、このBPOをこなすため、10月13日付で北海道のBPOセンターを移転・拡大した「新北海道BPOセンター」を開設している。
受注の決め手となったのは、給与計算のアウトソーシングの基盤やノウハウをマイナンバーBPOにも応用することで価格を抑えたことと、マイナンバーの漏えい事故を危惧するユーザー企業が番号を自分でもちたがらない。さらには、ユーザー企業の本業の売り上げや利益に結びつかないマイナンバーによって、既存の業務フローを変えられたくないという意向が予想以上に強かったことが挙げられる。
同社のマイナンバーBPOでは、従業員数5000人規模のモデルユーザーで、初期費用を除けば年間1人あたり250~500円で利用できる競争力ある価格に設定した。これによって当初は200社20万人分の新規受注を見込んでいたが、蓋を開けてみると100社余り約93万人と、企業規模が予想よりも大幅に大きくなっていることがうかがえる。
給与計算をアウトソーシングする企業は、一般に流通・サービス業などパート・アルバイトなど人材の流動性が大きい業種が比較的多く、ぺイロールもこうした顧客も抱えている。だが、マイナンバーBPOへのニーズは「意外にも正社員中心の大企業が多かった」と驚きを隠さない。
とはいえ、マイナンバーBPOは今がピークで、一過性の制度対応の側面は否めない。ぺイロールでは、マイナンバーBPOをきっかけに新規で取引きが始まった100社余りの顧客と良好な関係を保ちつつ、今後1社でも多くの企業が、ぺイロールの本業である給与計算サービスのユーザーになってもらえるかが焦点となる。(安藤章司)