製造業向け基幹系(販売管理、生産管理)システムの開発を得意分野とするソフテムコム。売り上げの8割が客先に常駐するSES(System Engineering Service)で、残りがエンドユーザーからの受託開発案件という構成になっている。経営の安定という視点から、受託開発を売り上げの5割に伸ばすべきとソフテムコムの杉野彰彦代表取締役は考えている。そこで目をつけたのが、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」。まずは開発案件を受注するためのドアノックツールにする考えだ。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 ソフテムコム
所在地 大阪市中央区
資本金 1000万円
創業 2005年8月
社員数 46人
事業概要 ソフトウェア受託開発・開発支援、企業向け業務システムの提案・導入・サポート、人材派遣業
URL:http://www.softem.com/ 大阪と東京の両輪で安定化

杉野彰彦
代表取締役 ソフテムコムは、1981年創業のソフテムからSES部門が独立するかたちで設立された。ソフテムはオフコンでのシステム開発を起源としていて、現在ではパッケージシステムの案件が中心となっている。
関西地区では製造業が盛んということもあって、ソフテムコムは製造業向け基幹系システムを多く手がけてきている。現在では案件が多く経営は順調だが、先を見据えた活動にも積極的だ。その一つが、東京への進出。2013年2月に東京オフィスを開設した。
「以前から、顧客の要望で東京の案件があり、出張ベースで対応していた。東京に仕事があるのは、わかっていた。ただ、過去に1回、東京進出に失敗している。原因は人材が集められなかったこと。今回は、たまたま知人が東京事務所を立ち上げたい、エンジニアも集めると提案してくれたので、再挑戦した」と、杉野代表取締役は語る。15年度は、はやくも東京の売り上げが大阪を抜く勢いだという。
とはいえ、東京を中心にすることは考えていない。「東京は案件の規模が大きいものの、利益率は大阪よりも悪い。大阪は案件が小さいものの、長いつき合いの顧客が多いので、当社に対する評価が高い」ことから、杉野代表取締役は大阪と東京の両輪でビジネスを展開していく考えだ。「大阪と東京でいい競争意識が生まれている」と、杉野代表取締役は東京オフィス設立の効果を実感している。
元請け案件を5割に伸ばす
杉野代表取締役は、金融系などの大型開発案件が落ち着く18年には景気が悪化すると考えている。とくにSESは景気動向に左右されやすいため、東京オフィスが伸びているとはいえ、このままでいいとは考えていない。
「リーマン・ショックのときには、売り上げが6割近く落ちて、そこから2年くらい苦しい状況が続いた。それを経験しているので、経済不況になっても対応できるように、景気動向に左右されにくい元請け案件を増やしたいと考えている」と杉野代表取締役は話す。バブル経済の崩壊、そしてリーマン・ショック。その二つを乗り越えることができたのは、エンドユーザーとの取引があったからだという。経済不況に陥っても、業績が好調な企業はある。同業種から仕事を受けるSESは、同時に厳しくなるため、契約を打ち切られやすいが、元請けであれば開発が続くこともある。ただし、エンドユーザーの案件には波がある。SESにもメリットが多いため、なくすつもりはない。現在、8割ほどを占めるSESを5割程度に下げて、元請け案件を5割に伸ばし、元請けとSESを両輪として機能させる考えだ。
ロボットを新たな事業に
元請け案件を伸ばすための施策として取り組んでいるのが、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」のシステム開発。まずは企業の受付用として提案していく予定だ。
「現在は、SESの案件が多く、なかなかPepperのシステム開発に注力できないが、少しずつ取り組んでいる。最初は当社の受付として活用したり、異業種交流会のイベントなどに貸し出したりすることで、新たなビジネスに取り組んでいることをアピールしていきたい。また、Pepperは注目のロボットなので、エンドユーザーの受けがいい。ドアノックツールとして活用し、それをきっかけに当社の得意分野である基幹系システムを提案していきたい」(杉野代表取締役)。
ソフテムコムでは、タブレット端末やスマートフォン向けのシステム開発も手がけているが、取り組み始めたのが遅かったため、先行するITベンダーに割って入るのが難しい状況にあるという。その反省から、少し先を見据えて、ロボットに注目した。ビジネスの中心は製造業の基幹系システムとしていくが、エンドユーザーの反応をみながらロボットにも注力し、受付以外の活用方法も模索していきたいとしている。