Googleが多くの自社製品で使用している人工知能・機械学習のソフトウェア「Tensor Flow」をオープンソース化したことで、人工知能の実用化に向けて大きな変化を予感させることとなった。なんと商用も可能なライセンスとして公開され、Googleのプロダクトで使われているエンジンと同レベルの機能を導入できるようになったのだ。アマゾンも6月に機械学習システム「Amazon Machine Learning」をオープンソース化している。
機械学習の研究開発は、世界中でさまざまな実験が行われていたが、標準化されたツールがないという課題が解決されることになり、一層研究が加速化されるだろう。とくにサービス開発が一気に進むことが予想される。
機械学習には大量のデータが必須であり、データをもっているものが、これからのキーを握ることになるだろう。「Google Photo」が無料で利用できる代わりに、個人がアップロードした大量のデータは分析の元ネタとして活用されている。Googleがアップロードされた写真の動物の種類を見分け、状況を理解し適切なキャプションを作成するところまできているのは、大量のデータと優秀なエンジニアの両方を抱えているからに他ならない。
オープン化によって、多くの研究やサービスに利用されエンジンは精度の高いものになる。そして、さまざまなデータが集中管理されるようになり、ますます人工知能の開発は進むことになるのは確実だ。
写真データが増えれば、写真による判別はより精度が高くなる。動物の個体判定さえも可能になるだろう。これによって、動物保険の個体判別など利用価値は無限大だ。IoTの普及で街中の多くのモノがインターネットにつながり、状況を伝えるセンサとなり、これらはすべて機械学習用のデータとなる。個人のバイタルデータも行動履歴もすべて管理されている。まさにセンサブルシティだ。これらのデータは一体誰のものか?
個人がきちんとデータを管理でき、必要なところにデータを提供し、代わりにサービスの恩恵を享受するのが一番いいはずだ。しかし、データを個人が管理することは簡単なようで難しい。だからこそ情報を預かる銀行のような機関が、個人情報を預かり管理代行する。やはり情報銀行が必要になるだろう。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。