Internet of Things(IoT)が大流行りである。10月初旬に、経済産業省設立の「IoT推進コンソーシアム」への入会案内が届き、さっそく会員登録を行った。その後、いくつかの案内をいただいたが、儀式めいた集まりばかりに感じたので、まだ実際に参加したものはない。送られてきた資料のなかに「IoT・ビッグデータ・AI を活用したビジネスモデル事例」というのがあり、多岐に渡る分野から三十余の事例が紹介されていた。眺めているうちに、何でもありという印象をもったのだが、一方で何か欠けているという思いが浮かんだ。利用者が自ら考案し創造するプロシューマという視点である。
皆さんはProcessingを知っておられるだろうか?2001年にMITメディアラボで開発された電子アートとビジュアルデザインのためのプログラミング言語であり、統合開発環境である。情報技術分野の予備知識がないアーティストでも、簡単にプログラム開発を始めることができるようにとの目的で開発された。Arduinoは、05年にイタリアで開発されたオープンソースの制御用シングルボードコンピュータである。監視制御システムのプロトタイピングを廉価にとの目的で開発された。Arduinoは、仕様がオープンソースであるため、サードパーティのセンサや制御部品がさまざま流通しており、また開発環境には、Processingをベースにしたものが採用されているおかげで、専門知識に乏しくても、容易に監視制御システムを開発することができる。Raspberry Piは知ってる方も多いと思う。09年に英国で設立されたRaspberry Pi財団によって開発されたシングルボードコンピュータである。コンピュータの基礎教育に適した廉価なシングルボードコンピュータを提供するという目的で開発されたのだが、IoTの普及に伴って専門家の間でも高い評価を得ている。
これらの製品は近年のIoT普及のなかで、中心的役割を担っていて、専門的な教育を受けていない人でも、容易に廉価に活用できるようにとの目的で開発されたものである。この事実から、IoT普及のカギは、情報通信技術の専門家側にあるのではなく、IoT利用者側にあると私は考えている。IoTの普及促進には、利用者が自ら考案し、容易に開発できる開発環境やセンサ、制御機器などが廉価に流通する市場環境の早急な整備こそ肝要である。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。