パブリッククラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を運営するアマゾンウェブサービスジャパンは、向こう1年間で、直近の約300社のビジネスパートナーを、およそ3割増しの400社規模へ拡大させる。AWSの日本国内における市場規模が順調に伸びていることを追い風にして、パートナービジネスをより加速させる方針だ。(安藤章司)
パートナー拡大にあたっての変更点として、昨年まで最上位パートナー「プレミアパートナー」認定に必要なAWS使用料(パートナー視点では仕入れ額)が月間25万ドル(約3000万円)規模だったのを、2016年は数倍に引き上げることを検討している。これはパートナー全体のAWS取り扱い高が増えているためで、最上位のプレミアパートナーのハードルもそれに合わせて高く設定するというものだ。
一方で、AWS月額使用料が1000ドル(約12万円)の「スタンダード」、同5万ドル(約600万円)「アドバンスト」は据え置き、新規のパートナーが入りやすい環境を維持。向こう1年でパートナー総数を直近の約300社から400社規模へ増やしたいとしている。
認定技術者についても、最上位の設計者(アーキテクト)に相当する「プロフェッショナル認定」を「昨年より倍増させる」(今野芳弘・パートナーアライアンス本部本部長)とともに、作業者に相当する「アソシエイト認定」、利用者に相当する「ベーシックスキル」のすそ野を広げていく。
もう一つ、AWSでは業種対応コミュニティの充実にも取り組む。従来の金融機関の情報セキュリティ基準「FISC」にAWSを適用するためのコミュニティに加えて、医療業界においてコンピュータシステムの信頼性を保障する仕組み「コンピュータ化システムバリデーション(CSV)」にAWSを適合させるコミュニティも立ち上げた。
FISCコミュニティにはTISや野村総合研究所、SCSKなどが参画。CSVの手引き書(リファレンス)を配布する予定のコミュニティには、NTTデータグローバルソリューションズやJSOL、東洋ビジネスエンジニアリング、日立システムズなどが参画した。
1月下旬に開催されたAWSの「パートナー戦略説明会」で登壇したサーバーワークスの大石良社長は、「直近5年間でAWSの利用料金が100倍に増えた」と好調ぶりをアピール。金融に強いTISの内藤稔・プラットフォームサービス企画部副部長は、「FISCコミュニティのメンバーに参画したことによって、金融におけるAWS活用を推進しやすくなった」と話した。
また、ウイングアーク1stの田中潤・取締役CTO開発本部本部長は「AWSの高速データベース(DB)の『Aurora(オーロラ)』を採用することでAWS上でのDB処理の高速化を実現できた」と活用事例を紹介。ワークスアプリケーションズの荒川康彦・BPO Div. シニアゼネラルマネジャーは、「システム基盤にAWSを積極的に活用している」とコメントしている。

写真左からサーバーワークスの大石良社長、TISの内藤稔副部長、アマゾンウェブサービスジャパンの今野芳弘本部長、ウイングアーク1stの田中潤取締役、ワークスアプリケーションズの荒川康彦シニアゼネラルマネジャー