2015年11月に開かれた富士通グループの第3回サイバーセキュリティコンテストには、従来同様、予定人員を超える申し込みがあった。今回から新たな試みも始めており、参加者のモチベーション喚起に余念がない。(本多和幸)
過去2回のコンテストは、ほぼ個人戦といっていいかたちのコンテストだったが、今回から、1チーム4人の団体戦となった。そして、各チームには、仮想企業の情報システム部という役割がアサインされ、システム運用者の立場で、システムトラブルやインシデントに立ち向かうという設定だ。
奥原雅之・セキュリティマネジメントサービス事業本部サイバーディフェンスセンターセンター長は、「実際に存在する企業をイメージした舞台設定とシナリオをつくった。ただ単に腕を競うだけでなく、ビジネスシーンのセキュリティインシデントとしてどんなことが起こるか、それをどう解決するかを体感してもらう仕組みにしている」と説明する。
運営チームである「忍30」が、会場に「伊賀の里」「甲賀の里」という拠点をつくり、ここからサイバー攻撃を仕掛けるかたちで出題することは前回説明したとおり。得点は、事業継続性、ブランド力の維持、エンドユーザーの満足度など、技術観点ではなく、ビジネスにどう貢献したかという観点で加点するようになっている。「ただ単にスキルをもつだけでなく、それが企業活動の枠のなかでどういう意味をもつのかということまで理解しながらやってほしい」(奥原センター長)という思いを込めた。
難易度もさまざまで、既存のシステムの弱点をみつけて、そこに対してアクセスを試みるというような、いわゆるハッキングの力を試すような問題がある一方で、多くの人に気軽に参加してもらえるように、ビギナーでも楽しめるような仕掛けも入れているという。難しい課題ほど高得点の設定になっているため、終盤で他チームに差をつけられていれば、難問にチャレンジして一発逆転を狙うというゲーム性もある。
各チームの得点状況や活動状況を目に見えるかたちにする仕組みでは、富士通が開発したセキュリティダッシュボード「エトノスコープ」を活用している。ちなみに、エトノスコープはセキュリティコンテスト「サイバー甲子園」のスコアボードにも提供している。コンテスト中は、定期的にエトノスコープをみながら各チームの活動を解説する機会を設けているため、出場者以外もセキュリティに関する知見を深めることができる。

エトノスコープをホワイトボードに投影し、各チームの得点状況や活動状況を可視化している