情報セキュリティ分野に力を入れるF5ネットワークスジャパンは、販売力のあるビジネスパートナーとセキュリティに強いパートナーとの連携を推し進めている。そのモデルケースと位置づけているのが、東京エレクトロンデバイス(TED)とNRIセキュアテクノロジーズ(NRIセキュア)の連携である。(安藤章司)
TEDは、1999年からF5ネットワークスのロードバランサをはじめとするネットワーク機器の国内流通を手がけてきた有力販売パートナーである。情報セキュリティへの脅威や攻撃の多くがインターネット経由で行われることから、ネットワーク側でのセキュリティ機能を強化するF5ネットワークスの製品戦略に賛同するかたちで、TEDもセキュリティ専門チームを2015年10月に立ち上げるなど、同分野での取り組みに力を入れてきた。
だが、TEDの販売面での競争力は高いものの、「セキュリティだけに焦点をあてた場合、やはり専門的なサービスベンダーに一日の長がある」(TEDの林英樹・執行役員CNカンパニーバイスプレジデント)ことから、セキュリティ分野を専門的に手がけるNRIセキュアと連携。相互に補完することにした。TEDとNRIセキュアで、まずはF5ネットワークスのウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を軸に協業をスタート。この協業により向こう3年で20億円程度のビジネス創出を見込む。
WAF機材を顧客先に設置し、NRIセキュアが24時間体制での遠隔運用サービス「WAFマネージド・セキュリティ・サービス」を提供する。NRIセキュアの平舘一哉・上級ITセキュリティコンサルタントは、「攻撃する側はぜい弱性を巧みに突いてくることから、ただファイアウォールを設置しただけではまったくもって不十分」と、セキュリティの専門家による運用サービスと組み合わせて初めて有効な対策が打てるようになると話す。
TEDは販売力を生かして顧客にWAFを納品するとともに、NRIセキュアの遠隔運用サービスも一緒に提供することで、「より多くの付加価値を顧客に提供できるようになる」(F5ネットワークスジャパンの大塚順一・パートナー営業本部本部長代理)とみている。恒常的な遠隔運用サービスが欠かせないのは、セキュリティ商材の特性でもある。
ポイントとなるのは、TEDのような販売力のあるパートナーと、NRIセキュアのような「セキュリティ運用センター(SOC)」系のサービスに強いサービス提供型のパートナーとのマッチングを、どう円滑に進めるかにある。F5ネットワークスでは、SOCを運用するようなサービス提供型ベンダーを複数社パートナーとして迎え入れ、従来の機器販売に長けた販売系のパートナーが組みやすいサービスベンダーと組んでもらえるよう選択肢を広げ、注力分野であるセキュリティビジネスの成長につなげる方針だ。

写真左からNRIセキュアテクノロジーズの平舘一哉コンサルタント、東京エレクトロンデバイスの林 英樹執行役員、F5ネットワークスジャパンの大塚順一本部長代理