SCSKが国内総販売元を務めるヤマハ製ネットワーク機器は、中小企業や流通業など多拠点に展開する業種で圧倒的な支持を得ている。法人向けの機器でありながら根強いファン層をもつユニークな製品だが、そのような文化が生まれた背景にはオープンな販売戦略と徹底した情報公開への取り組みがあった。(日高 彰)
1995年にISDNルータ「RT100i」を発売して以来、ヤマハのネットワーク機器事業は20年あまりの歴史を刻んできた。ISDNを通じてインターネットに常時接続が可能になったばかりの当時、一般企業でも買える価格のルータとして注目を集めて、以来ネットワーク市場では日本ブランドの機器として存在感を示し続けている。
その市場展開をヤマハと二人三脚で進めているのがSCSKだ。RT100iは、開発・製造をヤマハ、販売を住友商事が担当する形で発売され、現在までヤマハのネットワーク製品は住友グループが販売元として営業・マーケティングを一手に引き受けている。
法人向けIT製品を手がけるグローバルベンダーの場合、資格・認定制度などを含むパートナープログラムを設けることが多いが、住友商事はヤマハ製品に関して認定リセラー制はとらず、「売りたい人は誰でも売れる」商流で展開した。これは販売がSCSKに引き継がれた今も変わっていない。その分、当初から情報公開には力を入れており「VPNで店舗と本社を接続する」など利用シーンごとに詳細な設定方法をウェブサイトに掲載している。サポートも販売店任せにすることなく、ヤマハがユーザーからの問い合わせを直接受け付けることで、現場で発生している困りごとを迅速に解決できる体制を整備。また、公開されている情報に沿ってセットアップしていくだけで企業に必要なネットワーク環境を構築できるため、専門のネットワーク技術者がいない中小SIerからも好評という。メーリングリストやコミュニティサイト、毎年全国規模で開催するセミナーなどを通じて、ヤマハ製品を扱う技術者間の交流も盛んだ。
「誰でも売れる」という展開はある意味でコンシューマの製品に近い。それだけに競合他社は、「ヤマハのやり方に対抗して中小ネットワーク市場を攻略する」という動きがとりにくい。何より、この20年で積み重ねたユーザーや技術者の層の厚さが、競合に対する強力な武器になっている。また、人気の理由の一つがコストパフォーマンスである以上、ヤマハ製品1台の収益は決して大きいものではない。しかし、一度導入したユーザーは次もヤマハ製品を選択する傾向にあり、拠点の増強やリプレースなどで継続的な需要が期待できる。多くの販売店が継続して支持しているのはこのためだ。
近年は「オールヤマハ」のネットワークを提案できるよう、スイッチや無線LANにも製品ラインアップを拡張している。SCSKでは、情報に加えて検証機の提供も手厚く行うことで、新カテゴリの製品の価値をパートナーに伝えようとしている。(つづく)

毎年秋から冬にかけて全国10会場でのセミナーを開催