ITツールへの関心が高い人の多くが使っているアプリケーションの一つが、オンラインストレージの「Dropbox」だろう。会社として導入する以前に、社員は個人のPCやスマートフォンでアプリの使い方を知っている。この「もう使っている人がいる」という状況は、サービスの拡販においては非常に有利なのだという。(日高 彰)
Dropboxの日本法人、ドロップボックス・ジャパンでは、個人向けサービスとして2GBの容量を無料で使える「Basic」版と、1TBの容量に加えてサポートサービスなどのついた「Pro」版(月額1200円)を、法人向けサービスとして「Business」版を販売している。2014年10月に日本法人が発足して1年半あまりが経過したが、河村浩明社長によるとビジネスは好調という。圧倒的な認知度と利用率がある米国に比べると、日本のネットユーザーへのDropboxの浸透は一歩遅れているが、有償ユーザーは他国のユーザーよりも多くの容量を高頻度で利用する傾向が明らかになっており、使ってもらえればよさが伝わる、伸びしろの大きい市場と分析している。
オンラインストレージは、法人市場で先行するBoxを始め、グーグルドライブやマイクロソフトのOneDriveなど、ビジネス向けクラウドの付随サービスとして提供されるものもあり、競争が激化している。そのなかでDropboxは、PCからモバイル機器まで幅広いデバイスとOSを中立的にサポートしており、早くから一般コンシューマ市場でも使われていることが武器になっているという。

河村浩明
社長 IT部門が管理していないデバイスやサービスを従業員が業務で使う、いわゆる“シャドーIT”が問題となっており、会社としてオンラインストレージを導入する企業が増えている。IT部門としては、当然ながらシャドーITから会社指定のサービスへの移行を徹底しなければならないが、移行先サービスの使い勝手が悪いと、結局はシャドーITの使用を禁止しきれない。その点Dropboxなら、コンシューマ市場で鍛えられた高いユーザーエクスペリエンスを提供でき、何よりすでに個人として使っているユーザーが多いので、使用方法の教育コストがかからない。「導入企業のIT部門からは、従業員からの問い合わせやクレームがこないサービスとして高く評価されている」(河村社長)という。「一度調査してみたら、すでにDropboxを使っているユーザーが社内に大勢いた」という理由で導入が決まるケースも多く、これがDropboxの“勝ちパターン”になっている。このため、無料ユーザーや個人用の「Pro」版ユーザーを増やすことは、法人向け事業にとっても重要な戦略になっているという。
また、法人向けの販売では昨年、ソフトバンク コマース&サービスとの間で総代理店契約を締結。国内ISV各社との連携も増やし、仕事の基盤としてDropboxが使われる環境づくりを進めている。(つづく)