コンサルティングから設計、構築、そして運用サポートまで、ワンストップの提供を強みとしているKYOSO(岡田恭子社長)。システム開発に30年以上の歴史をもっているが、過去の成功体験に固執することなく、市場動向に応じて柔軟に対応している。ユーザーに最適なものを提案するという姿勢があるからだ。変化に強い体質とするために、同社では社員に資格の取得を推奨している。管理職に求めているのは、ITコーディネータ(ITC)資格の取得である。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名KYOSO
所在地京都府京都市
資本金3億7000万円
設立1973年3月
社員数500人
事業概要コンサルティング、インフラ構築、システム開発、データセンター運用、サービスデスクなど
URL:http://www.kyoso.co.jp/ パブリッククラウドを推奨

水野正英
常務取締役
パブリッククラウドが普及しない理由の一つとして、「SIerがオンプレミスのシステム構築にこだわるから」という指摘がある。クラウドではサーバーなどのハードウェアの売り上げがない分、初期投資の金額が小さくなるからだ。売上金額がインセンティブの対象であれば、営業担当者としてはクラウドを売りたくないということになる。
一方でクラウドかどうかを気にしないSIerも多い。ハードウェアなどのインフラの上のレイヤ、つまり業務知識が重要となるシステム開発のレイヤで勝負しているからだ。KYOSOの水野正英・常務取締役は、「クラウドといっても、プログラム開発の部分は変わらない。インフラ系のエンジニアは対応しなければいけないが、問題なくキャッチアップしている。運用が楽でBCP対策になるなど、クラウドには価格以外のメリットも多い。そのため、当社としては顧客にクラウドを推奨している」と語る。
クラウドの採用に関しては、ユーザー企業もセキュリティ面などで難色を示しがちだが、「しっかり説明すれば、社内で運用するよりも安全だと納得していただける」と水野常務。最近ではクラウドの認知度が向上したこともあり、オンプレミスかクラウドかにかかわらず、最適な提案を望むユーザー企業が増えているという。
IoTで新規顧客の開拓へ
KYOSOは、コンサルティングから、設計、構築、そして運用サポートまで、ワンストップで提供できることを強みとしている。なかでも業務にいかに貢献できるかを重視している。「在庫を圧縮したり、販売サポートのシステムで売り上げ向上を実現したり、顧客のビジネスに貢献できるシステム構築を手がけてきている。それも構築して終わりではなく、システムが寿命を迎えるまで、しっかりサポートしている」と、水野常務は同社の強みを強調する。このスタンスによってユーザー企業との信頼関係を築き、景気に左右されにくい経営体質につながっている。
とはいえ、新規の顧客開拓や市場開拓にも余念がない。「次はどのようなITがくるのか、常に注視している。最近では、センサを活用したIoTソリューションに取り組んでいる。また、パッケージ製品の開発も手がけている」(水野常務)と積極的だ。
管理職にITC資格を推奨
IT業界では今、多くの企業がエンジニア不足を課題としている。それはKYOSOも同じだ。水野常務は、「エンジニアを積極的に採用したいと考えているが、いまは難しい状況にある。当社は京都では知名度があるものの、全国的にはあまり知られていない。そのため、いかに魅力的なビジネスを手がけるかも重要になる」と新規ビジネスの重要性を感じている。
ただ、この先もエンジニア不足の状況が続くとは限らない。「これまではエンジニアがいれば売り上げにつながったが、今後どうなるかは見極めないといけない。人工知能がエンジニアを不要にする可能性もある。とはいえ、エンジニアが必要とされるところはあるはず」と水野常務。将来を見据えて同社が人事制度に盛り込んだのが、資格の取得だ。資格をもつことで、技術力を底上げするのが狙いである。また、管理職にはITC資格の取得を推奨している。水野常務もITC資格を取得した。
「ITCを取得したことによって、顧客のざっくりとした要求に応えやすくなったと感じている。ITを駆使するとしても、ITだけではなく、顧客の会社全体を巻き込むような提案ができるようになった」と、水野常務は効果を実感している。とくに中小企業向けの提案でITC資格が役に立っているという。同社のITC資格取得者は現在9人。今後もITC資格取得者を増やしていく考えだ。