金融と不動産の分野を強みとするSound‐F(サウンドエフ)。2006年の創業以来、コンサルティングなどの上流工程に注力している。システム開発も社内で対応できるが、基本的には顧客に大手SIerなどを紹介し、開発案件は担わないのが基本スタンスだ。金融向けのコンサルティングといえば、コンサルティング会社や大手SIerが幅を利かせていて、新規参入が難しいと思われる分野だ。そのなかで、Sound‐Fは大手金融機関も頼りにする独自の立ち位置を確保している。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 Sound‐F
所在地 東京都千代田区
資本金 3000万円
設立 2006年6月
社員数 25人
事業概要 金融ソリューション事業、REITソリューション事業、サイトプロデュース・システム構築、PMOコンサルティングなど
URL:https://sound-f.jp/ 受託開発はやらない方針

土屋清美
代表取締役 「受託開発を否定するつもりはないが、当社では引き受けない方針としている」と、土屋清美・代表取締役は語る。コンサルティング事業からスタートしたSound‐Fは、事業の拡大とともにシステム開発も担ってきたが、上流工程へのこだわりを基本路線としている。
受託開発に取り組まないのは、「人月仕事は、サヤを抜いて終わり。夢がないから」と土屋代表取締役。とはいえ、社内にシステム開発ができる体制があるため、受託開発を担うことができる。コンサルティングから派生するシステム開発案件については、小規模であれば例外的に請け負うこともあるという。
ただ、同社のシステム開発部隊は、受託開発のためにあるわけではない。「コンサルティングの結果、システム開発のコンセプトがみえてくると、パッケージ化やサービス化に向いているものがでてくる。そういった場合には、当社の製品やサービスとして開発することがある」(土屋代表取締役)。Sound‐Fでは、不動産アセットマネジメントシステム「STREAM」というパッケージ製品をもっているほか、個人資産管理システムを大手SIerにOEM供給している。また、月額課金のストックビジネスを目指し、新たなサービスの構築を模索している。
金融機関もIoTに注目
Sound‐Fの創業メンバーは、金融や不動産の分野に精通した3人のITコンサルタント。創業メンバーそれぞれの強みが、今日においても同社の主力事業となっている。新規参入のコンサルティング事業を軌道に乗せるのは簡単ではないし、しかも金融業界は大手が囲い込みを狙う激戦区。そのなかで生き抜くことができた理由をたずねると「魅力的だから(笑)」と、土屋代表取締役は核心に触れない。何度も聞くうちに、ようやく「人脈」という答えが返ってきた。ありきたりだが、重要なポイントである。加えて、人材には自信があるとのこと。コンサルティングの延長線上には、大型のシステム開発案件が出てくることもあるが、そこに手を出さないのは、上流のコンサルティングを担う人材にこだわっているからだ。
ITコンサルティングが基本のSound‐Fに対し、金融機関からの依頼はITありきではなく、ビジネス視点の内容が多いという。「金融業は、基本的にITが絡んでくる。金融機関はそれを熟知しているので、ITを考慮せずにコンサルティングを依頼してくる」。銀行業務に関しては行員のほうが詳しいはずだが、新規のビジネスでは行内にノウハウがないなどの理由から、外部のコンサルタントを頼ることになる。
最近は金融業界でも、IoTやビッグデータが注目のキーワードになっているという。それらに関連するコンサルティング依頼が増えていて、「以前はバズワード的だったのが、実際のビジネスとして動き出していることを実感できる」とのこと。ちなみに、話題のFinTechに関しては「何も新しいことはない」と、土屋代表取締役は強気のコメントをしている。
B2Cへの展開を模索
創業から10周年を迎えたSound‐Fは、次の10年を見据え、新たな展開を模索している。「これまではB2B分野が主戦場だったが、次のステージとして、B2C分野に展開していきたい」と、土屋代表取締役。その背景にあるのが、金融業界の規制緩和である。「B2B分野のサービスが、コンシューマ向けにも広がっていく。そうした動向をいち早く捉えて、チャレンジしていきたい」。今後もテクノロジー主導で規制緩和が広がっていくと確信している土屋代表取締役は、大手SIerと組んで新しい金融向けサービスを展開することも視野に入れている。
また、金融分野は規制緩和によって他業種が参入しやすくなるなど、“ボーダレス”の時代を迎えている。そのため、金融分野でのコンサルティングノウハウが他業種でも必要とされているという。Sound‐Fではこれもチャンスと捉え、高付加価値を前面に出したコンサルティング事業を積極的に展開していく考えだ。