AUTOSARビジネスの拡大を目指し、組み込み主要ベンダーはさまざまな動きをみせている。リアルタイムOS関連の組み込みソフト開発に強いイーソルは、SCSKのAUTOSAR準拠OS「QINeS-BSW(クインズ・ビーエスダブリュー)」の共同開発(SCSKを軸とする7社連合)に参画するとともに、今年5月、大手自動車部品メーカーのデンソーが51%出資をして設立したAUTOSAR関連の開発子会社オーバスに、NEC通信システムと共同で出資をしている。
デンソーが過半数出資する会社だけに、端的にみて、オーバスは、少なくともデンソーが手がけるAUTOSAR関連ビジネスには、高い確率で関与できる。その一方で、SCSK陣営は独立系の強みを生かして、自動車メーカーの系列に影響されることなく、オープンなビジネスが展開できる。AUTOSARは、もともとオープン・アーキテクチャを基本としており、メーカー系列を超えた連携が求められている。こうしたこともあり、デンソーは51%出資をしつつも、イーソル(35%出資)やNEC通信システム(14%出資)など独立系のITベンダーの資本参加を求めたと考えられる。
オーバス連合の登場によって、AUTOSARビジネスは、名古屋大学の高田広章教授を中心としたAPTJ陣営、SCSK陣営の国産勢3社に加えて、欧州のベクターやエレクトロビット、米国のメンター・グラフィックス、インドのKPITといった外資勢が入り乱れる市場環境となった。

イーソル
上山伸幸
常務取締役 こうしたなか、イーソルは、欧州にあるAUTOSAR開発コンソーシアムのプレミアムパートナーの承認を今年4月に獲得したと発表。大手自動車関連ベンダーが名を連ねるなか、日本の組み込みソフトベンダーとして初めての承認となる。イーソルがAUTOSARに深く関与し、ビジネスの可能性を見出している背景には、「ソフトウェアのライセンスより、サービスビジネスの規模のほうが大きくなる」(同社の上山伸幸常務取締役)との見立てがあるという。
AUTOSARは自動車の特定の部品を制御するOSではなく、将来的に「走る、止まる、曲がる」といった自動車の挙動を統合的に制御するプラットフォームになることが見込まれている。例えば、自動車業界は、エンジンやブレーキ、ハンドルなどの主要パーツを統合的に制御する共通プラットフォームへの対応が不可避となり、AUTOSARをベースとしたインテグレーション(統合、構築)サービスへの需要が大きく拡大するというわけだ。
その割合はライセンス3、サービス7、あるいは4対6になるのか、詳細は不明だが、インテグレーションサービスを提供しようとすれば、それなりのAUTOSAR人材の頭数を揃える必要があり、この時点で、少なくともサービス領域においては「国内勢が有利になる」と期待している。前述の通り、AUTOSARはオープン・アーキテクチャであるため、それそのものでは差異化が難しい。早い段階からインテグレーションサービスに着目することも優位性を高めることにつながるといえそうだ。