テックビューロの朝山貴生社長とともに、ブロックチェーン推進協会(BCCC)の副代表理事を務めるのがカレンシーポートの杉井靖典・代表取締役CEOだ。自社独自のビジネスのほかに、ブロックチェーン関連の複数の実証事業を専門企業として支えており、市場形成のカギを握る一社といえよう。(本多和幸)
ブロックチェーンの市場形成を本格化させるためには、エンジニアだけでなく、経営・事業企画側の人材がブロックチェーンを理解し、どんなビジネスに活用できるかという知恵を出していく必要がある。杉井CEOも、「ブロックチェーンはすでに、ビジネスサイドの人も巻き込んで市場をつくっていくフェーズに入っている」と指摘している。そこで5月9日付の『週刊BCN』1627号では、ブロックチェーンの特性や可能性について、杉井CEOに、“非エンジニア”向けのわかりやすい解説をお願いした。
そこで語られたブロックチェーンの特性は、要約すると、「価値そのものをデジタルデータとして発行でき、その移転、交換も、耐改ざん性、外部監査性を担保したかたちで実現できることであり、突き詰めると貨幣(トークン)機能と監査証跡機能の二つに集約される」ということだ。カレンシーポート自身の事業としても、杉井CEOが考えるブロックチェーンのこうした特性を生かしたビジネスモデルを展開している。具体的には、資金決済、取引契約、監査証跡が必要な業務アプリ向けの開発支援ミドルウェアとして、「Deals4」を開発・提供している。
信託保全の自律監査と外部監査を両立

カレンシーポート
杉井靖典
代表取締役CEO 杉井CEOは、同社のビジネスモデルについて次のように説明する。
「例えば、資金移動業のような立て付けの事業で考えた場合、ブロックチェーンを使うと、発行したトークンの数量と信託保全されるべき価値 (金額)が等価であることを数学的に保証、確認できる。さらに、信託残高ステートメントを取り寄せ、タイムスタンプを打って、電子署名をしてブロックチェーン上に参照情報を公開すれば、残高ステートメントの情報を改ざんすることは実質的に不可能になる。つまり、信託保全の自律監査と外部監査をブロックチェーンにより両立できるということ。これらは、利用者が安心して使えるプリペイドマネーを実現するための基盤になる」。
「われわれは、ブロックチェーンを活用したプリペイドマネーのエコシステムをつくりたいと考えている。そのなかに財布の概念をつくって、人から人、人から機械、機械から機械、機械から人のように自由に取引決済ができる、銀行APIよりもはるかに高度かつ柔軟でビジネスに踏み込んだAPIをインターフェースとして提供していくのが、Deals4のねらいだ。Deals4を使えば、資金移動系のアプリケーションなら、あっという間にできるという世界を目指したい」。