ITサービス管理、運用管理のツールを提供するServiceNowが、日本市場におけるパートナーエコシステムの拡大に力を入れている。運用の効率化に加えて、顧客のビジネスプロセスの標準化を支援できる技術として訴求、パートナーのサービスの付加価値向上を後押しする。(日高 彰)
ServiceNowは、“システム運用の教科書”であるITILにまとめられているような、「ITサービスマネジメント」を実現するためのツールを提供している。典型的な利用ケースとしては、従来Excelの台帳で行っていたインシデント管理や変更管理を、より確実に行うため導入するといった例が挙げられる。システムの運用管理者やサービスデスク担当者の作業効率を向上させるのと同時に、運用プロセスの標準化を実現できる。
顧客数は世界で3000社を超えており、とくにITサービス管理のコンセプトを早くから受け入れた欧米の大企業が導入を進めている。最近は日本のグローバル企業でも採用が広がっているというが、その多くは海外の現地法人が先行して導入。近年になって業務プロセスの世界共通化を図るため、海外にあわせて日本の本社でもServiceNowを採り入れるというパターンのようだ。また、製品は当初からSaaS/PaaS形態のクラウドサービスとして提供しており、スモールスタート、アジャイル型ですばやく展開できるのが特徴となっている。

村瀬将思
社長 今年1月、それまで日本ヒューレット・パッカードでソフトウェア事業の責任者を務めていた村瀬将思氏が日本法人の社長に就任した。日本企業のシステム運用の現場やIT市場の商流を熟知する村瀬社長は、「今年度は日本の顧客に向けてパートナーと共同で事業戦略を立て、ビジネスのエコシステムを確立する」と話し、今後パートナー経由の提供へと軸足を移す姿勢を打ち出している。
国内のSIerがServiceNowを扱うメリットとしてはまず、各社の運用サービス自体を効率化できるという点が挙げられる。日本では属人的な努力で問題を乗り越えることをよしとする文化がまだまだ払拭しきれていないが、これからIT人材の確保がますます難しくなるなか、システムごと、顧客ごとに個別化されていたプロセスの標準化が急務となっている。ServiceNowを利用すれば、プロセスの統一だけでなく、イベントにもとづく管理の自動化なども可能なので、サービスの質を高めることができる。
ServiceNowが最近力を入れているのが、ITサービスや運用管理のみならず、ビジネスの管理にも同社製品を適用するという提案だ。電子メールやExcelシートへの記入などで個別的に行っていた業務をServiceNowに統合することによって、各種申請や稟議、情報共有、人事・経理など一般管理業務のプロセスも標準化し、各業務の質やコストを可視化し、一部の業務は自動化することも可能だ。ServiceNowでは、ITの効率化を入口としながら、顧客の業務改革を支援できるという点を訴求。サービスの高付加価値化を目指すSIerをパートナーとして日本市場を本格的に攻略する考えだ。