愛知県名古屋市のシステムサーバーは、ユーザー企業のIT投資意欲が高まっていることに伴って、堅調に成長している。「電力自由化」によって電気事業の規制が緩和されているなか、電力会社系の案件を獲得して売り上げを伸ばしている。迅速で柔軟な対応が評価を受けており、ユーザー企業のビジネス拡大にもつながっている。今後は、ソリューション化や営業地域の拡大などビジネス領域を広げていき、2035年には社員500人、売上50億円規模を目標に据えている。(取材・文/佐相彰彦)
顧客の“身内”になる

鈴木秀美
社長 1997年に設立したシステムサーバーは、中部圏を中心にビジネスを展開し、県内の売上比率が全体の8割を超えている地元密着型のSIerである。一番の強みは、顧客の要望に迅速に応える点だ。鈴木秀美社長は、「顧客は、IT化によって少しでも早くビジネス拡大を図りたいと考えている。そのため、これまで6か月程度のスパンだったシステム構築を、最近では半分程度に短縮してほしいという要望が多い。これに応えることが重要」としている。
ただ、単に顧客の要望に応えればいいというわけではない。「顧客のいうことをベースにシステムを構築していては、業界で問題視されているシステムの『スパゲティ状態』になる可能性を秘めている。顧客が望むことと現実的にできることをすり合わせることがポイント。顧客の声をしっかりと聞いて、現実的ではないことは『できない』とはっきり伝えなければならない。親身になって、しかも顧客のためになることを提案する。いうなれば顧客の“身内”になることがカギになる」と鈴木社長はかみ締める。
競争に勝つシステムを提供
「顧客の身内になる一つの方法として、顧客が他社との競争に勝つシステムを提供して成長へと導く」(鈴木社長)ことがシステムサーバーのコンセプトである。具体的な導入事例では、直近で中部電力系のシステム構築案件があったという。「電力自由化」が本格化するなかで、電力事業者は顧客を奪われないよう、今まで以上にサービスを充実しなければならない。システムサーバーは地元電力会社の差異化サービスを支援することに注力する。その結果、これまでもつき合いのあった中部電力系のシステム会社と組んで、中部電力がサイトで消費者向けに提供しているサービス「カテエネ」のバックオフィス系を担当することになったのだ。中部電力がカテエネによって他社に対し優位性がもてるようにするため、「ニーズに柔軟に応えて、電力自由化がスタートする前に仕上げることに重きを置いた」と鈴木社長はアピールする。基幹系、設備管理、顧客管理などのプロジェクトに参画してシステムをつくりあげた。
カテエネがスタートした今も、消費者向けのサービスが追加されれば、「迅速なシステム改善をしていくことを念頭に置いている」という。
会社規模・売上拡大戦略を計画
現在、システムサーバーのスタッフは70人程度だ。課題として抱えているのが、「エンジニアの数が少ないということ」と鈴木社長は話す。そのため、カテエネのような迅速にシステムを構築しなければならない案件は、顧客が他社との差異化を図るためだけでなく「社員のスキルアップにもつながる」(鈴木社長)と認識している。また、幅広く案件を経験することによって「当社のなかにノウハウが蓄積されて、例えば横展開するためにソリューション化するなど、さまざまな可能性がある」としている。さらに、これまではオンプレミス型システム構築が中心だったが、「今後はクラウドサービスなど、提供形態の幅を広げていきたい」との考えを示す。
中部電力の例を含めて、システムサーバーでは大企業へのシステム提供を中心にビジネスを手がけてきたが、今後は中堅・中小企業を新規顧客として開拓するなど、ユーザーの裾野を広げる。「今後は県内中心から、地域を限定することなく、さまざまな角度からビジネスを手がけていきたい」との考えを示している。
そのため、会社の規模を拡大することを視野に入れている。ただ、急激に拡大路線を敷くわけではなく、「身の丈に合った戦略を立てていく」と鈴木社長は話す。
目標に据えているのが、2035年までに社員500人、売り上げを50億円と、現状の5倍に引き上げることだ。ビジネス地域を広げるために、「パートナーを掘り起こす必要も出てくる」と捉えている。ソリューション化やクラウドサービスを絡めた展開は、パートナーを確保するためでもある。