韓国のポップコーンザー(チェ・スンヨブ=蔡承燁社長)は、AUTOSARに特化した仮想デスクトップサービス「オートウェア」(仮称)の販売を年内にも始める。AUTOSAR開発ベンダーは、自社AUTOSARに最適化したツールを開発しているが、オートウェアはこうしたツールをブラウザから呼び出せるサービスだ。AUTOSAR開発ベンダーのライセンス(使用許諾)の範囲内であれば、場所や時間に関係なく、「どこでもAUTOSARツールを活用した開発業務を行うことができる」(チェ社長)ようになる。
オートウェアは、仮想デスクトップを基本構造としながら、ユーザーの使用状況を記録し、分析する機能がある。ユーザーがどのように、どれくらい使ったかを可視化することで、(1)国内外、複数拠点で同時開発する場合でも開発の進捗状況の把握が可能(2)eラーニングなどの教育/研修用途で、ウェブブラウザさえあれば、場所や端末を問わず学習環境を提供できる(3)AUTOSAR開発ベンダーが自社ツールをユーザーに試用してもらう場合、もし購入に至らなかったら確実にソフトウェアを使用不能にでき、構造上、コピーもできない――といった活用が可能になる。用途に応じてSaaS型、客先設置型を選べる。

写真右からチェ・スンヨブ(蔡承燁)社長、
チョン・ミンヒョン(全玟賢)課長代理
汎用的な仮想デスクトップの機構は、すでに多くのベンダーが開発しているが、AUTOSARに特化することで、AUTOSAR開発で求められる機能を優先的に実装しやすくなる。ポップコーンザーは2015年に設立した韓国のスタートアップ企業で、用途を特化することによって販売先が明確となり、少ない営業リソースでも効率よく販売ができる。
日本や韓国でAUTOSARの採用が進んでおり、AUTOSAR技術者の育成が急がれている。ポップコーンザーの社名の由来は、「映画館でポップコーンをほおばるように、誰でも気軽にAUTOSARの開発ツールを使えるようにする」(チョン・ミンヒョン=全玟賢・海外営業部課長代理)もので、AUTOSAR普及のタイミングで売り込みをかけることでシェアを一気に高める。
日本や韓国では電機メーカーや組み込みソフト開発ベンダーが、AUTOSAR技術者の育成に一段と力を入れており、eラーニング方式で学習効率を高めたいとするニーズが強まる見込み。韓国ではAUTOSAR対応のECU(電子制御ユニット)を開発する大手電機メーカーからの研修用途ですでに引き合いがきているという。また、ユーザーがAUTOSARの開発ツールの選定を進める過程で、ツールベンダーは自社ツールの試用頻度などを把握。営業的なフォローを適切に打つことで失注を回避しやすくなる。
ポップコーンザーでは、2017年末までをめどに、まずは日本と韓国で3000ユーザーを獲得。その後、EUや米国へ進出し、19年末までには累計1万3000ユーザーを獲得していく方針を示している。