ウェブサイトの運用では、コンテンツやサービスの公開・改善が本来注力すべき業務だが、現在ではそれに加えて、セキュリティ対策などの作業負荷が増大している。そこでシックス・アパートでは、ユーザーが“本業”に集中できるサービス型のCMSに重点をおいている。(日高 彰)
最近はウェブサイトがサイバー攻撃の主要な対象となっており、サイトのぜい弱性が顧客情報の流出など深刻な事故を引き起こすことがある。また、攻撃の被害に遭わずとも、システムの不具合でサイトがダウンすれば、売り上げの減少や顧客の退会・解約などビジネスに直接の悪影響をおよぼす。ウェブサイトの運用においては、サーバーやCMSを常に適切な状態に維持しておくことが、今やコンテンツやサービスの投入と同様に重要な業務となっている。

しかし、多くのユーザー企業ではサイトのシステム自体を維持管理するためにコストを割けないどころか、サーバー管理のスキルやノウハウもなく、何年も前に導入したCMSがアップデートもされないまま使われ続けているケースがしばしばみられる。
シックス・アパートでは、サーバー不要でアカウント作成後すぐにサイトを作成できる中小規模サイト向けCMSサービス「MovableType.net」や、最新版Movable Typeが稼働するクラウド基盤を月額制で利用できる「Movable Typeクラウド版」を用意し、ユーザーがメンテナンス作業に時間を取られることなく、本来のサイト運営に集中できる環境を提供しようとしている。
同社がライセンス販売からサービス提供へと舵を切ることで、従来Movable Typeを利用してウェブサイトを構築していたパートナーのビジネスにも影響を与えることになるが、ウェブ制作会社やSIerなどでも、サイト設計は得意だがインフラの保守に長けた人員が少ない、システム開発経験は豊富だがウェブのセキュリティ動向には疎い、といった課題を抱えているケースは少なくない。シックス・アパートでは今後、特別な要件があるプロジェクト以外ではサービス型のCMSが支持されるとみているほか、古いCMSでサイトを運用していたサイトをMovableType.netやクラウド版へ移行する案件が増えることを期待しているという。
クラウドやセキュリティに関しては専門的なノウハウが求められ、1社の力で案件が完結しないことも多いため、パートナープログラム「ProNet」の加入社の横のつながりも強化し、各社のスキルを持ち寄ることでユーザーに最適な提案を行えるよう体制を整えていく考え。また、現在は名実ともに日本が本拠地となったシックス・アパートだが、アジアを中心とした海外展開に向けて準備を進めており、アジア諸国ですでに事業を展開しているパートナー各社と連携してMovable Typeの普及拡大を図る戦略を描いているという。