プライム・ストラテジーが、WordPress高速実行環境「KUSANAGI」のパートナープログラムを立ち上げた。採用事例も広がりウェブ業界で存在感を増すKUSANAGIだが、当初はこれを売り物とする考えはなく、同社内での“炎上”を防止するためのツールだったという。(日高 彰)

中村けん牛
代表取締役 「KUSANAGI」は、ウェブアプリケーションを高速に動作させるための「チューニング済み仮想マシンイメージ」だ。コンテンツ管理システム(CMS)として世界で最も広く利用されているWordPressを採用しており、WordPress本体と、その動作に必要な各種ソフトウェアがインストール・設定済みの状態で提供されている。AWS、Azureを始めとした国内外の主要パブリッククラウドサービスに対応しており、ユーザーは使用するマシンイメージとしてKUSANAGIを選択するだけで、すぐに高速かつ安全なWordPress実行環境を手にすることができる。オープンソースソフトで利用自体は無料だが、ディストリビューション元として保守・運用を提供する「公式サポートサービス」を提供しており、今回のパートナープログラムはこのサービスの再販/取次パートナーを募集するものだ。すでに数社のパートナーとの間でKUSANAGIの活用を始めていたが、問い合わせが多くビジネスとしての十分な可能性が考えられることから、商流をプログラム化して広く水平展開することになった。
昨年7月の公開から1年あまりで“商品化”にこぎ着けたKUSANAGIだが、中村けん牛・代表取締役は「社内で使っていたものを公開しただけで大きな反響をいただき、驚いている」と話し、もともとは自社の業務を効率化するためのツールだったと打ち明ける。
KUSANAGI導入以前、同社のプロジェクトは「納品直前にかなりの確率で炎上していた」(中村代表取締役)という。顧客は必ずしもITに関して深い知識があるわけではない。その顧客との間で合意した要件通りにシステムをつくっても、実際には納品物が使いものにならず、わずかな期間で徹夜の修正を余儀なくされる事態がしばしば発生していた。顧客が求める機能は満たすことができても、性能に関しては要件が定義されていないため、できあがったシステムにデータを流し込んでみて初めて性能不足が発覚するといったパターンだ。中村代表取締役は、「このような顧客側とベンダー側の意識のギャップが最大の問題」と指摘し、このギャップを埋めるためのベンダー側の工夫として、ウェブアプリケーションの性能を担保するための基盤であるKUSANAGIを開発。顧客ごとに環境を一から構築せずとも、同社の技術者がウェブアプリケーションの開発・運用にすぐに取りかかれるようにし、想定を超える大量のアクセスにも耐える性能を確保した。
同社では当初KUSANAGIの性能を訴求点としていたが、最近ではWordPressを安全・確実に使える環境としてニーズが高まっているという。適切にメンテナンスされていないWordPress環境にはセキュリティ上の危険や、互換性の問題などが発生するが、KUSANAGIにはそのような心配がない。ウェブ制作会社やSIerがKUSANAGIを扱うメリットはまさにこの点にある。(つづく)