本号からは、ブロックチェーンがもつ可能性について、GLOCOMシンポジウムのパネリストの声をピックアップする。(本多和幸)
パネリストの一人である経済産業省商務情報政策局の佐野究一郎・情報経済課長は、産業振興を担当する同省の立場から、国がブロックチェーンにどんな期待をもっているかを説明した。
経済産業省は今春、識者の協力を得て、「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」を取りまとめている。パネルディスカッションでは、ここで指摘したブロックチェーンの可能性をあらためて解説したかたちだ。
調査報告書では、ブロックチェーン技術がもたらす社会変革の可能性を、五つの類型に整理。類型ごとに想定できるユースケースも例示(表参照)。さらに、それぞれの市場規模についても試算結果を公表している。

経産省は関連市場を67兆円規模と試算
「ユースケースとして一番実用化が近いと考えられるのが、価値の記録化とその流通。具体的には地域通貨や電子クーポンなどだ。次いで、登記や船荷証券などで、証明行為を非常に低コストで行うという用途でも浸透していくだろう。トレーサビリティへの活用も有望だ。最近注目しているのは、国家の文書管理のような用途。トレーサビリティをブロックチェーンで管理することによって、広い意味でのセキュリティ確保にも貢献できるのではないかと思う。5番目のプロセス・取引の全自動化・効率化の実現は、とくに期待が大きいところ。スマートコントラクトでプロセスが自動化されて、IoTの各デバイスがマイクロペイメントとセットで自律的に動いていくような世界というのは、非常に夢がある」(佐野課長)。
報告書では市場規模は総額67兆円だという。佐野課長は、「数字が一人歩きしている部分がある」と指摘しつつも、最終的にはそれ以上の規模に拡大していく可能性もあることを示唆した。