富士通システムズ・イーストは、SIerらしく顧客の業務に深く入り込んだオープンイノベーションを実践している。従来であれば、課題解決の方法を提示して、新しいSI案件を受注する流れになるが、課題が難しければ難しいほど、あるいは活用するITが先進的なものであればあるほど、システム構築後の効果が見極めにくい。そこで、顧客と共同して実証実験を行うなどして“イノベーション”を模索する手法を積極的に採り入れている。(安藤章司)
課題選定をしたのち、平均してSE二人がかりで2週間ほどの時間を費やして、プロトタイプをつくり実証実験に臨むパターンが多い。プロトタイプや実証実験は富士通システムズ・イーストと顧客との持ち出しになるが、狙い通りの成果が得られる手応えが得られれば、「高い確率で受注につながる」(中崎毅・ビジネス戦略本部長)ことが、これまでの経験から明らかになっている。

富士通システムズ・イーストの
中崎 毅本部長(左)、高津陽一部長
直近の例では、建設会社の巴コーポレーションと協業してAR(拡張現実)技術を活用した製造部材の品質検査システムを開発。特許も出願中であるなど新規性が高い成果をあげた。建設部材を製造し、現場に運搬して建築する流れのなかで、万が一、部材の寸法が設計と違うといった不具合があると、現場で組み立てることができず、手戻りが発生してしまう。そこでスマートフォンなどのカメラで部材を出荷前に撮影し、AR技術を活用して設計図である三次元CADデータを重ね合わせる。CADデータとの差異を視覚的に明らかにすることで、誰でも容易に部材の品質検査ができる仕組みである(図参照)。

富士通システムズ・イーストの資料をもとに『週刊BCN』編集部で作成
オープンイノベーション手法を全面的に採り入れる前は、こうした顧客との実証実験にかかる人件費を、ある種の“見込み案件”と位置づけてSEの人件費を捻出していた。だが、新規性が高ければ高いほど、プロトタイプをつくって実証するプロセスが欠かせなくなったことから、2015年4月からオープンイノベーション手法を「全社的に取り組み」(高津陽一・新規ビジネス推進部部長)と位置づけ、会社組織として同手法を実践することにした。(つづく)