石川県金沢市に本社を置き、設立当初はSIerとしてシステム開発を手がけていたサイバーステーションは今、メーカーへと大きく変貌を遂げている。同じ金沢市に本社を構えるアイ・オー・データ機器とのパートナーシップがきっかけで、デジタルサイネージシステムを開発。メーカーとして全国に名を轟かすようになった。競合がひしめくなか、福永泰男社長は他社との差異化要因として「SIerだったからこそ、SIを意識したデジタルサイネージを追求している」と自信をみせる。
Company Data会社名 サイバーステーション
所在地 石川県金沢市鞍月4-187
資本金 8000万円
設立 2000年5月11日
従業員数 約50人
事業概要 システム開発、コンテンツデザイン制作、コンテンツ企画・広告事業、ASP/SaaSサービス、映像配信サービス、セキュリティネットワーク、ハウジング・ホスティング
URL:http://www.cyberstation.co.jp/ 簡単にネットが使える環境に

福永泰男
代表取締役社長 サイバーステーションの設立は2000年。福永社長が1998年に「ドリームワークス」という社名で創業したのが前身だ。もともと福永社長は、学生時代に得意だったコンピュータのスキルを生かそうと、卒業後は上新電機傘下の三共ジョーシンに就職。パソコン専門店「J&P」の店員になった。固定客が多く、常にトップクラスの販売成績。そんなとき、インターネットが普及し始めた。90年代後半だ。「誰でも簡単にインターネットを使えるようにしたい」。そう決意して起業した。
インターネット環境のさらなる普及に向けて、当初は小規模プロバイダ向けパッケージシステムの開発、サーバーホスティングサービスなどが主力のビジネスだった。サイバーステーションの設立後は、コンピュータ機器やネットワーク機器、インターネット回線の販売も手がけるようになった。提供する側のビジネス拡大をサポートしてインターネット利用者を増やすことに取り組み、コンスタントに案件を獲得して順風満帆だったが、東京を訪れた際に大型ディスプレイに映し出される広告をみて「電子広告はビジネスになるかもしれない」と考えるようになった。05年11月には、動画配信システム「CyberMotion」を開発した。また、その翌年にアイ・オー・データ機器と資本提携した。サイバーステーションにとっては、地元大手ITメーカーで頼もしいパートナー。実際、「(社長の)細野(昭雄)さんは、新しい製品・サービスを創出するうえで大きな存在。とくに、アイデアは非常に勉強になる」という。その細野社長に電子広告について相談した。
販売代理店は200社に
資本提携をきっかけに、アイ・オー・データ機器との関係が深まり、08年に簡単ホームページエディタ「Webpilot」をリリース。一方で電子広告の配信を切り口とした事業化の模索から数年が経過していた。その頃、細野社長が新しいハードウェアを開発したとSTB(セットトップボックス)をもってきた。電子広告が簡単に配信できるように、開発された製品だった。福永社長は、「これでデジタルサイネージシステムが開発できると瞬時に感じた」と振り返る。09年、デジタルサイネージシステムとして「サイバーモーション デジサイン(デジサイン)」の提供を開始した。サイバーステーションは、ここから本格的にメーカーへの道を進み始めた。
STBとサーバー(LAN DISK)を組み合わせて、しかも他社のシステムと比べて安価、ユーザー企業にとって簡単に使いこなせるということを切り口に、デジサインを拡販するために販売代理店の開拓に力を注いだ。次第に販売代理店は増えていき、「今(16年10月時点)では、200社弱までに達している」と福永社長は満足げだ。
サイネージの用途を広げる
デジタルサイネージといえば、小売店舗が商品をPRするために設置するケースが多い。実際、デジサインの提供を開始した頃は商業施設などが導入する傾向が強かった。また、金融機関が商品・サービス、金利情報や顧客向け注意喚起などの情報を配信するために活用した。
ただ、サイバーステーションでは「デジタルサイネージの用途を広げたい」という意識でデジサインを開発した。その用途とは、「情報共有」という切り口だ。一般オフィスの総務・管理の担当者を対象に、社内の情報が共有できることを提案。「徐々にユーザー企業が増えている」と福永社長は手応えを感じている。
今では、情報配信端末を店舗やオフィスなどに設置するモデルだけでなく、タブレット端末やスマートフォンなどスマートデバイスにも対応しており、例えば営業担当者が社内の情報を外出先からでも共有できるなど、「いつでも、どこでも」をテーマにデジサインは進化している。福永社長は、「販売パートナーがアプリケーションや製品・サービスを組み合わせるなどインテグレーションしやすく、しかもユーザー企業が使いやすいデジサインを追求する」との方針を示している。