IoT/ビッグデータのビジネスに力を入れる東芝は、自社開発のIoT向けデータベース(DB)ソフト「GridDB(グリッドDB)」でオープンイノベーションの手法を採り入れている。2016年2月にGridDBのソースコードを公開。IoT/ビッグデータに取り組む民間企業や大学・研究機関に活用してもらうことにした。(安藤章司)
DBといえば、業務用途のリレーショナルDBが定番。このタイプのDBは取り扱うデータの量をあらかじめ予測し、それに合わせて設計することで性能を最大限に引き出すことができる。このためリレーショナルDBの設計に優れた技術者は、昔から重宝されてきた。ところがIoT/ビッグデータでは、その特性上、非定型であることが多いうえ、無尽蔵にデータが増えていくことから、「NoSQL」と呼ばれる非リレーショナルDBを使うことが必須とされる。GridDBは、このNoSQLジャンルのDBというわけだ。

IoT/ビッグデータは発展途上の技術やビジネスであり、世界中で実証実験が盛んに行われている。NoSQL系のDBの開発もGoogleやFacebookなどビッグデータの扱いに長けたベンダーによって、すでに実績ある製品が存在しており、GridDBと競合する。ここから先、IoT/ビッグデータ向けDBとして勝ち残るには、「世界規模で巻き起こっているイノベーションの輪の中に入り込まないと存在し続けることは難しい」と、GridDB事業を担当する東芝インダストリアルICTソリューション社の望月進一郎・商品企画部参事は話す。
端的にいえば、IoT/ビッグデータの実証実験が世界中で行われるなかで、どこまでGridDBを使うユーザーを増やせるかが勝負の分かれ目となる。また、GridDBを進化させていくためには、IoT/ビッグデータの実証実験や実用化で得られた知見を製品に反映させることで、技術的優位性や使い勝手を向上させることが求められる。望月参事が指摘する「イノベーションの輪の中に入る」とは、まさにこうしたOSSをベースとした、オープンイノベーションの好循環を創り出すことにほかならない。
すでに電力会社や、事務機器メーカーの保守メンテ用途、大学のIoTプロジェクトなど国内外で行われるさまざまな実証実験でGridDBは活用され始めており、その知見もOSSコミュニティを通じて共有されている。次号では、東芝の収益モデルについてレポートする。