今回登場いただくのは、“ヘルステック”に取り組むスタートアップのきりん(永用万人社長)です。もともと電子カルテの受託開発を行っていた同社は今月、完全無料の電子カルテをリリースしました。電子カルテの普及、ひいては今後の医療の発展を見据えています。
Company Data会社名 きりん
代表 永用万人代表取締役社長
設立 2013年12月
所在地 東京都港区(本店)
事業概要 電子カルテ開発・運用保守事業 スマホアプリ・Webシステム開発事業
URL:https://xirapha.jp/ どんな会社なの? 
山口太一
取締役
経営企画管理本部長電子カルテ「きりんZERO」を開発・提供しています。
きりんZEROは、一般診療所(クリニック)向けにクラウドサービスとして提供する電子カルテです。電子カルテをはじめ、レセコン(レセプトコンピュータ、診療報酬明細書の作成)機能や、患者専用の無料アプリ「きりんHR」(2017年2月提供開始予定)などと連携して利用できます。レセコン機能においては、日本医師会が提供する日医標準レセプトソフトウェア「ORCA」と連携していることから、常に最新の情報が反映された状態でレセプトの作成を行うことができ、操作性も追求しているとのこと。ほかにも、診察ごとの病名チェックや、患者の年齢・体重から適切な薬剤料を算出する機能など、医療事務の作業負担軽減につながる機能を備えています。
何が新しいの? 完全無料で利用できます。
何よりの注目ポイントは、きりんZEROに搭載されたこれらの機能を「完全無料」で利用できること。どれだけの頻度で利用しても、記録する患者数が増えても、料金はまったくかかりません。山口太一取締役経営企画管理本部長「医療機関や患者さんからは一切料金をいただかない」と強調します。
どんなビジネスモデルなの? 三つの収益モデルを整えています。
一つは、きりんZEROの診療データを活用して診療報酬の当月立て替え払いを実現するクリニック経営支援サービス「きりんFRM」。立て替えに伴う手数料をクリニックから徴収します。二つめは、薬剤情報を医師に提供する「きりんMR」。製薬会社などから、処方薬の情報掲載のための費用を徴収します。三つめは、電子カルテから収集される情報を「医療ビッグデータ」として活用して、製薬会社や保険会社との協業を図ります。きりんFRMは今月からスタートし、後の二つについては、きりんZEROの導入数がある程度の規模に達してから開始する計画です。
よろしくきりん
厚生労働省の調査によると、2015年6月時点で、一般診療所全体(10万933施設)のうち、電子カルテを導入している施設は約3割程度。残りの7割は紙のカルテを利用しているということです。普及の妨げになっているのが、導入・保守コストの高さ。そこで、きりんでは「安く簡単に使える」ことに重点を置き、完全無料の電子カルテを提供することで「クリニックのIT投資を劇的に下げる」ことをビジョンとしています。
きりんZEROは今年12月に提供を開始したばかり。「2020年までに6000施設への導入を目指す」(山口取締役)といい、今後に期待が高まります。きりんは「完全無料の電子カルテ」でイッポ前へ!